ゴールデンウィークの初日。
いちばん早い早朝の便の車で神修を発った。そのおかげで私以外に乗っている学生はおらず少しだけ安心した。
窓の外をぼーっと眺める。
あれだけ自分から「神修で勉強したい」とお兄ちゃんや禄輪さんに訴えたくせに、今はあの場所から離れられるのが嬉しいなんて。
沢山心配するメッセージをトークアプリに送ってくれていた嘉正くんたちには、実家に帰省することだけを伝えた。
ゴールデンウィーク中にみんなでピクニックに行こうと話していたけれど、皆は快く送り出してくれた。
変に気を遣わずに「お土産よろしく〜」「帰ってくる時にモックのチーズバーガーセット買ってきて!」といつも通りの返事が来て、それがいくらか心を軽くした。
気脈をでて鬼門を抜けると、「おかえり」と声をかけられた。顔を上げるとお兄ちゃんが嬉しそうに手を上げる。
目を丸くした。
「お兄ちゃん……迎えに来なくていいって言ったのに」
「寂しいこと言うなよ〜。お兄ちゃんは毎日、巫寿に会いたくて会いたくて震えてるんだぞ」
うぇーん、と泣き真似をしたお兄ちゃん。
「なにそれ」
ふふ、と笑みがこぼれる。久しぶりに自然に笑った気がした。
「さ、帰るかぁ。晩ご飯は玉じい特製のスペアリブだぞ」
「本当? 嬉しい。玉じいのスペアリブ大好き」
「そーかそーか」
お兄ちゃんは私から荷物を取り上げると、ぐりぐりと頭を撫でた。