一人で出来なくもないので仕方なく一人で始める。前屈をしながら眉をひそめて視線を落とした。
なんだろう。無視されている訳ではない。だってさっきは先輩も挨拶を返してくれたし、あの子だって最初から今日は友達とペアを組もうとしていたのかもしれない。
ただほんの少しだけ胸の中に靄が広がる。少しだけ息がしにくい気がした。
きゅっと唇を噛み締めたその時。
「ごめん皆! 遅くなりました! ホームルームが長引いちゃって」
「あいつの話毎回長いんだよなぁ」
練習室の前の扉が開いて、聖仁さんと瑞祥さんが中へ入ってくる。
「部長、先体操始めてるぞ」
「うん、ありがとう。そのまま最後までやってもらえる?」
荷物をおいた二人が後ろへ混じった。
「あれ、なんだ巫寿あぶれたのか?」
「珍しいね。三人でやる?」
隅っこで一人だった私を見つけた二人がそう声をかけてくれた。
お願いします、と小さい声で頼めば「どーしたよ! 一人で寂しかったのか!」と瑞祥さんが私を抱きしめてグリグリと撫でる。
「ちょっと瑞祥、先に体操。あと巫寿ちゃんが潰れる」
いつも通りの二人なのに、いつも通りであることが嬉しくてちょっとだけ泣きそうになった。