(さかき)聖仁(せいじん)さんと夏目(なつめ)瑞祥(ずいしょう)さんは一学年上の先輩で、私が所属する神楽部(かぐらぶ)の部長と副部長だ。

穏やかで落ち着いた性格の聖仁さんと活発な で天真爛漫な性格の瑞祥さんは正反対のように見えて唯一無二のバディだ。

二学期に応声虫(おうせいちゅう)と呼ばれる怪虫が神修の寮内に入り込み、体に寄生された生徒が次々と倒れる事件が起きた。瑞祥さんもその被害に遭い、声が出なくなった。

その時の聖仁さんの己の無力さに苛立ち思い詰める姿は、瑞祥さんがどれほどの存在なのかを物語っていた。

全てが解決したあと、帰ってきた瑞祥さんを反り橋の下できつく抱きしめた聖仁さん。

二人がただの幼馴染ではないということは薄々気付いていたが、それで私は確信した。

間違いなく二人はお互いのことを深く想いあっている。少なくとも聖仁さんは幼馴染に抱く感情とは違う、特別な感情を抱いているはずだ。


男女の機微に疎いクラスメイト達はそれを見ても「仲のいい幼馴染」としか思わないらしく、どうしても誰かと共有したかった私はこっそり恵理ちゃんに電話した。


恋バナが大好きな恵理ちゃんはすっかり興奮して、それからというもの電話する度に「あの二人はどうなった!?」と聞いてくる。


「それが、三学期は神社実習があったから報告することはないの。瑞祥さんからは、二人で休みの日に出かけてる写真がたまに送られてきたけど」

「それってデートじゃん!」

「でも二人がその自覚ないからなぁ」


これまで間幼馴染として過ごしてきた期間が長い分、その関係が形を変えるのは難しいはずだ。

私だったら今の関係の心地良さを優先させてしまうかもしれない。