せっかく普段と違う格好をしたのなら、見せびらかしたいのが人間の本能。


人が多い夜の駅前をプラプラと歩いているだけで、さっきから何人もの男の人から話しかけられた。



きっとモテ女ってこんな感じなんだろうな…。


そんなアホなことを考えながら、ふと歩き疲れて時計台の下のベンチに腰掛ける。



「「はあ…」」



なんとなくついたため息が、隣にいた誰かと重なって思わず顔を上げる。



「あ、すみません…」



気まずそうにぺこりと会釈する、サラサラの黒髪のクールそうな男の人に、ぎょっとして目を見開く。


それが見知った顔、私の通う高校の非常勤の先生だったからだ。



彼、榎本秀(えのもとしゅう)は、担当科目は国語で愛想はあまりいい方ではなく、誰に対しても平等な先生だ。