心音が潮騒を奏でてる少女に対し、深央は冷静だった。もともとお喋りじゃないからいつも通りなのだが、場所が場所だからか、気まずい。


 目の前の美しい魔法使いは何を思ったのか、歌を口ずさみ始めた。



 雪解け水のように、どこまでも澄んだ、透明感のある歌を。


 
「……優しくて、きれいな歌ですね」


束の間の間だけ、歌が止む。


「じゃあ、教える。今夜ささらの部屋にいくから」

「え……!?」





 それは突然のお誘い。


 意味なんてないかもしれないが、きっと今夜は眠れないかもしれない。