月灯りを集めたような髪から見え隠れするステンドグラスのように、美しい煌めきを宿した水天の瞳が、不思議そうにこちらを見つめる。


 麗しい見た目からは、筋肉があるようには見えない。細マッチョなのかもしれない。母がそういう人が好みなのだと熱心に語っていたのを、何故か今思い出す。



「どうして、ささらがいるんだ?」



 月灯りのように柔らかい声が少女の名を呼ぶ。翡翠の海が広がる長い髪から、雫が肌に零れ落ちる。

 自分の名前を呼ばれ少女は、我に返った。


 「お風呂入りに来たからです。……女風呂だから、です」


 納得したように、月下の魔法使い――宵森深央(よいもりみお)は頷き、そうかと一言つぶやく。     
 
 本当に理解してるのか、いまいち謎だが。

 てっきり出ていくのかと思えば、そのまま露天風呂に身体を沈めてしまった。