誰もいない広い大浴場で、少女はひとり湯に浸かる。綺麗に磨かれた汚れひとつない空間は気持ちいいが、むしろ逆に緊張してしまう。


 「今度は誰かと一緒がいいな」


 あいくんは嫌がりそうだ。さっきも怒られてしまったから、望みは薄そうだ。もっと仲良くなりたいけど――少女はうーんと唸る。

 ふと露天風呂の存在を思い出す。いつも大浴場で終わってしまうのだが、せっかくだから気分転換に行ってみるのも悪くないかもしれない。

 少女は丁寧にタオルを巻き直し、それから露天風呂へ続く扉を開ける。その瞬間――花の香を纏う夜風が吹き込んだ。


 星の形をした白銀の花が咲いている。それはまるで、小さな庭のようでもあった。その花弁が纏う光は、ランプのように辺りを照らしだす。


 足をそっと湯に沈める。暑すぎずほどよい温度で管理された温かさが心地いい、月下の露天風呂はいいものだ。



 神秘的で美しくて――その時、少女の背後で扉が開く音がした。