考え事は歩きながらすべきではない。と、前にも学んだはずだったのだが、それは幻想だったかもしれない。

 それよりもだ、まずは謝るのが先決だ。


「前をよく見てなくて、ごめんなさ……あ」



 思いがけない人物に、少女は目をぱちくりさせる。


 目の前にいる不機嫌そうな少年こそ、例の毒舌少年である。ただでさえ鋭い目つきが、より鋭さを増す。


「あんたの目は飾りなわけ? いい加減にしてよね。これで、何回目?」
 

 高位の魔法使いだけが着ることを許されていローブを纏った少年は、半ば呆れたような顔をする。

 「あいくん……! こんな時間にいるの珍しいね、元気だった?」


 顔をぱっと輝かせ、今すぐ飛びつかんばかりの少女に少年は、さらに眉間に皺を寄せる。