魔法の植物で編まれた不思議な籠を持って、大浴場へと急ぐ。そこは、大浴場の他にも露天風呂、魔力回復の湯、治癒の湯といった様々な湯が用意されている。


 月灯りが差し込む長い廊下の大きな窓からは、椿のような紅い花

 レモネードの大きな満月。

 
 本当に、どうして私はここへ呼ばれたのかな……。


 『魔法使いの素質ゼロ。それでも僕らには、君が必要。語りはしないけど』


 私をここへ呼んだ人は、ミステリアスな人だった。 

 呼んだ側なのに、謎を振り撒くだけ振り撒いて、その人は。


『じゃあ――後は任せた』 と言い残し、姿を消した。


 いつか、呼ばれた意味を知りたい。いつか――考え事をしながら歩いていたせいか、曲がり角で誰かと派手にぶつかって、尻餅をつく。