勇気を出して声を振り絞るが、タイミング悪く一夜が口を開いたのも同時だった。



「あ、わりぃ。なに?」


「あ…ううん。何言おうとしてたか忘れちゃった。一夜はなに?」



さっきまで意気込んでいたのはどこにいったのか、私の勇気は声と共にしぼんでいった。



「あー…。あのさ、実は亜芽に渡したいものがあって」


「渡したいもの?」



一夜は鞄から小さな正方形の箱を取り出すと、それを私の目の前に置いてきた。



「…箱?」


「いや、箱なんだけど…中開けてみて」



言われた通り箱を開けると、中には小さな雫がついている指輪が入っていた。