「もう一杯、今度はカクテルを頂いて良いですか?」
「もちろん。うちはメニューはなくてね。お客さんの希望か、僕の気まぐれメニューになるけど……どっちが良いかな?」
「あまりお酒に詳しくないので、気まぐれカクテルでお願いします」
「ご注文承りました」
バーテンダーさんがにっこりと微笑む。
彼は私の好みの味を聞くと、すぐにカクテル作りに取り掛かり始める。
サワーグラスの中に、氷を入れて、朱色のリキュールとレモン漬けのシロップを少々。
そのあとソーダを注ぎ、軽く混ぜて……。
「ああ、外はすっかり雨が止んだみたい。雲もないし、ちょうど良いな」
不意にバーテンダーさんがグラスを置いて窓の外を眺めたかと思うと、窓際の席の方に誘われた。
「せっかくだから、窓際の席にどうぞ」
「え? 何かあるんですか?」
「窓の外を見てごらん?」
不思議に思いながら着席して、バーテンダーさんが開いた窓の外を眺める。
するとそこには……。
「綺麗な満月……」
「あれがストロベリームーン。六月の満月に見られる現象だよ」
ついさっきまで雨が降っていたとは思えないほど雲一つない夜空に、うっすらと桃色に色付いた満月が浮かんでいた。
「どこかのバカップルとは違ってお客さんは見れたから、ラッキーだね」
「は、はい」
「さて。月見と言ったら、当然お酒の出番」
バーテンダーさんはそう言って、グラスとタッパーを窓際の席まで持ってきた。
しゅわしゅわと炭酸が泡立つ中に、タッパーからイチゴの粒をポトリと落とす。
「ほら。こうするとカクテルにストロベリームーンを浮かべたように見えるでしょう?」
バーテンダーさんがいたずらっぽく微笑んで、グラスを月に掲げる。
「ストロベリームーンは恋が叶うと言われているんだよ。それをこうやってスパイスにすることで、願掛けするんだ」
泡立つ朱色のカクテルに浮かんだストロベリームーンは、とてもロマンチックに感じられる。
「これを飲むお客さんにも、素敵な恋が訪れるよ」
コースターの上に優しく置かれたグラスに、手を触れる。
「ストロベリーリキュールとレモネードのソーダ割りだよ。強くないから安心して召し上がれ」
「有難うございます」
次は、互いを支え合える人に出会えますように……。
そう願いを込めて、六月の満月に乾杯するようにグラスを空に掲げる。
すると不思議と、グラス越しのストロベリームーンから恋のスパイスが炭酸に弾けて揺らいでいるように見えた。
恋のおまじないが消えてしまわないようにと、ゆっくりと口元に運ぶ。
「甘酸っぱくて、美味しい……」
しゅわしゅわとした刺激の中に、レモネードの甘酸っぱさが口の中に広がる。
それは、心の中にまでスッキリとした気持ちを呼び込んでくれた。
次に感じたのは、ストロベリーの甘さと……そして優しさ。
そこに少しのアルコールが加わって、人恋しさを求める甘い気持ちも胸いっぱいに湧き上がってくる。
……そうだ。
出会えますように……なんて気持ちでいたら、ずっとひとりでいることになるかもしれない。
次こそは、私との性格がぴったり合う人に出会えたら積極的に行かないと。
ストロベリームーンの夜に出会った気さくなバーテンダーさんのカクテルは、新しい出会いに対して前向きになれる不思議な飲み物だった。
「もちろん。うちはメニューはなくてね。お客さんの希望か、僕の気まぐれメニューになるけど……どっちが良いかな?」
「あまりお酒に詳しくないので、気まぐれカクテルでお願いします」
「ご注文承りました」
バーテンダーさんがにっこりと微笑む。
彼は私の好みの味を聞くと、すぐにカクテル作りに取り掛かり始める。
サワーグラスの中に、氷を入れて、朱色のリキュールとレモン漬けのシロップを少々。
そのあとソーダを注ぎ、軽く混ぜて……。
「ああ、外はすっかり雨が止んだみたい。雲もないし、ちょうど良いな」
不意にバーテンダーさんがグラスを置いて窓の外を眺めたかと思うと、窓際の席の方に誘われた。
「せっかくだから、窓際の席にどうぞ」
「え? 何かあるんですか?」
「窓の外を見てごらん?」
不思議に思いながら着席して、バーテンダーさんが開いた窓の外を眺める。
するとそこには……。
「綺麗な満月……」
「あれがストロベリームーン。六月の満月に見られる現象だよ」
ついさっきまで雨が降っていたとは思えないほど雲一つない夜空に、うっすらと桃色に色付いた満月が浮かんでいた。
「どこかのバカップルとは違ってお客さんは見れたから、ラッキーだね」
「は、はい」
「さて。月見と言ったら、当然お酒の出番」
バーテンダーさんはそう言って、グラスとタッパーを窓際の席まで持ってきた。
しゅわしゅわと炭酸が泡立つ中に、タッパーからイチゴの粒をポトリと落とす。
「ほら。こうするとカクテルにストロベリームーンを浮かべたように見えるでしょう?」
バーテンダーさんがいたずらっぽく微笑んで、グラスを月に掲げる。
「ストロベリームーンは恋が叶うと言われているんだよ。それをこうやってスパイスにすることで、願掛けするんだ」
泡立つ朱色のカクテルに浮かんだストロベリームーンは、とてもロマンチックに感じられる。
「これを飲むお客さんにも、素敵な恋が訪れるよ」
コースターの上に優しく置かれたグラスに、手を触れる。
「ストロベリーリキュールとレモネードのソーダ割りだよ。強くないから安心して召し上がれ」
「有難うございます」
次は、互いを支え合える人に出会えますように……。
そう願いを込めて、六月の満月に乾杯するようにグラスを空に掲げる。
すると不思議と、グラス越しのストロベリームーンから恋のスパイスが炭酸に弾けて揺らいでいるように見えた。
恋のおまじないが消えてしまわないようにと、ゆっくりと口元に運ぶ。
「甘酸っぱくて、美味しい……」
しゅわしゅわとした刺激の中に、レモネードの甘酸っぱさが口の中に広がる。
それは、心の中にまでスッキリとした気持ちを呼び込んでくれた。
次に感じたのは、ストロベリーの甘さと……そして優しさ。
そこに少しのアルコールが加わって、人恋しさを求める甘い気持ちも胸いっぱいに湧き上がってくる。
……そうだ。
出会えますように……なんて気持ちでいたら、ずっとひとりでいることになるかもしれない。
次こそは、私との性格がぴったり合う人に出会えたら積極的に行かないと。
ストロベリームーンの夜に出会った気さくなバーテンダーさんのカクテルは、新しい出会いに対して前向きになれる不思議な飲み物だった。