行き倒れ美少年ユキリーン君は、逃げてきた奴隷商のことは詳しく話してくれたが、自分のことを聞かれると途端に黙り込んでしまった。

 顔の良い子は得だっぺ。だんまり決め込んでも急かされず、俺も皆も心配げに見守った。
 だけんど、素性も知れず、このまま本人が話さないのも問題じゃなか?

 隠していることに本人も罪悪感を持っているようなので、少なくとも悪い子ではなさそうだった。

「うーん。……ま、いいか! ユキリーン君、君の保護とこの村への滞在を認める。年はいくつ?」
「……十四歳です」
「未成年なら滞在中の保護者がいるね。世話役は……」

 ここにピナレラちゃんがいたら元気よく「あいっ」とお手々を挙げただろう。あいにく、きな臭い話になりそうだったので、屋敷の別の場所でお手伝いに行ってもらっている。

「ユウキ君、クウさん。この子も一緒にお願いしてもいいかな?」

 言われると思ったよ! 男爵の屋敷に置いてもどうせ周りは知らない人だらけだ。それならピナレラちゃんもいる御米田家で預かったほうがいい。

「「もちろんだべ」」

 てなわけで、ユキりんも暫定的に御米田さんちの子になったわけだ。



「そういえば、男爵は俺たちも普通に受け入れてくれましたけど……こんなに信用してくれちゃって大丈夫なんですか?」

 このときの俺は、まだ俺たち日本のもなか村の秘密を知らなかったので、こんなにすんなり男爵が俺たちを信じくれたことが不思議だった。

「ああ、それ? 私は人物鑑定持ちだからね。ランクは低いけど、その人が犯罪者かどうかチェックできるから問題ないと判断したんだよ」
「鑑定ー!?」

 あっ。そうだ、俺も夢の中の王様から貰ってたわ鑑定スキル初級!
 話し合いも一度切り上げて、俺はばあちゃんの家に戻る前に男爵から鑑定を含むスキル大全を借りることにした。

 それから俺たちは昼食も男爵の屋敷で世話になり、新たに増えた家族一名と一緒に御米田家へ帰ったのだった。



 またアルミ製のカートを押して、帰り道はばあちゃんもピナレラちゃんも歩いてのんびり行くことにした。
 まだ消耗してるユキりんを乗せようとしたが断固として断られた。むう、やはり十四歳は難しいお年頃だ。

 途中、村役場に寄って、ユキりんに施設の説明と、俺たちが村ごと異世界転移したことも話しておいた。

「異世界からの転生や転移は、知識として知っていました。学校で習うんです」
「へえ、やっぱりこの世界の基礎知識なんだな」

 なるほど、見た目の良さはともかく、この子は話し方もしっかりしてて、ちゃんとした教養もあるように見える。
 元々着ていた服もズタボロだったが、元はかなり仕立ての良い服だった。出自は多分、国内貴族だろうとこっそり男爵が教えてくれた。俺もそう思う。
 だが、ならなんで自分の素性を隠すのか。そこは時間をかけて聞き出していくしかないな……

「おにいちゃ。あいしゅ、たべりゅ?」
「そうだな、一箱ぐらいなら」
「こら、二人とも! お昼さ食べたばかりでしょ、またにしなさい!」
「「はあい」」

 村役場を見てアイスの美味しさを思い出したピナレラちゃんと俺は、ばあちゃんに怒られてショボンだ。
 仕方ない、今日はもうユキりんを早く連れ帰って休ませてあげよう。

 それに村役場の冷凍ショーケースの中にはまだまだたくさんの冷菓が残っているのだ。楽しみにしててけろ。