仲間達とともに外の世界、地下世界を見る。
塔から放たれる光は暗闇の世界を太陽もないままに強く照らし、はるか地平線の向こうまでさえ明確に映している。
これならずいぶん遠くまで見られそうだよー。
意気揚々と視線を外界へ移す僕達。
するとすぐさま目に見えてわかるほどの異様な光景に、言葉を失うことになってしまった。
「…………!! これ、は」
「……樹海?」
「見渡すばかりの樹々、木々……」
そこにあったのは、一言で言えば自然だ。
濃い緑。地表をどこまでも埋め尽くす、異常繁殖したような木々の連なり。
まさしく樹海だよー。
どこにも人工物は見当たらない。樹海に呑み込まれたのか、はたまた潰されたのか。数万年も立てばそりゃあこうもなるかもしれないね。
古代文明の痕跡どころじゃない、人間の営みの痕跡さえ欠片も残ってないや。なるほど、これは冒険者達も微妙な反応を返すはずだよー。
だけど驚愕はそれだけじゃない。僕達より先に、視線を遠い彼方へ向けていたレリエさんが最初にソレに気付いた。
「あ、あれは……!!」
「レリエさん?」
「どこ向いてるでござる? ずーっと向こ──!?」
震える声で僕らを促す彼女につられ、地平線の彼方を見る。そして目に入ってきた光景に、僕らは今度こそ絶句した。
──暗雲にも似た巨体がある。陸地に大きく聳え立つ、黒い闇の塊だ。
雲じゃない。かといって山でもない。それはおそらく生物だ。顔がどこかとか、胴体とか手足がどこかが判然としないけど、それは明らかに生物のフォルムをしている。
サクラさんが、唖然とした様子で我を取り戻して叫んだ。
「な、なんじゃありゃ!? でござる! 雲!? いやまさか、や、山!?」
「にしては形がおかしい! ……まるで、動物のような」
「虫にも、獣にも、魚にも見える……けど、何か、残骸めいているような気がしますが……?」
黒ずんだ巨体は遠目からでは詳しいところはわからない。近づいて調べる必要があるだろうけど、少なくとも山じゃないのは間違いない。
いろんな動物の面影を残した、合体させたかのような奇妙で恐ろしい、見ているだけで背筋が凍りつくような姿をしてるよー。
アレが何か、知るはずもないけど僕にはなんとなく分かった。
きっとアレなんだ、古代文明を滅ぼしたのは。人に作られ、暴走して、そしてすべてを食らってみせた化物の中の化物。
アレを殺すために、僕はきっと生み出されたんだ。
「まさか、あれが、神?」
「そんな……あのようなモノが、人の手で生み出されたと!?」
「間違いないわ……わ、忘れるわけがない。あの姿、アレは紛れもなく私が、眠りに就く前に見たのと同じモノ。古代文明を滅ぼした、元凶!!」
「無限エネルギーを宿した、神……」
怯えも露にレリエさんが叫んだ。遠く、こちらを見ている冒険者達もやはりか、と息を呑む。
地下世界が作られるきっかけとなった、つまりは僕達の世界を生み出すきっかけとなった生命。あるいは本当に、僕らにとっての神と言えるかもしれない。
そんな生き物の成れの果てが、視界の先に映る巨躯だった。
そう……成れの果て。最初に見た時点でわかっていたけど、改めて認識するよ。
アレはもう、死んでいる。
「死んでる……っぽいでござるな? 劣化はあまりしてないみたいでござるが」
「うん、見るからに生命を感じない。アレは間違いなく死んでるよー」
「あの神の死をもってソウマくんが計画から解き放たれたと考えれば、骸は10年くらい前まで生きてたことになるからね。古代文明の痕跡そのものはどうやら数万年の時に呑まれて樹海に消えたようだけど、アレだけはつい最近まで生きていたことになる」
「劣化のなさはそのせいか……!」
生きている生命が放つ気配を、あの巨躯からは感じられない。もう完全に死んでいるんだと思う。サクラさんも同じ見解だし、そこは間違いないね。
モニカ教授の推論からすると、アレはつい10年前くらいまでは生きていたことになる。ついって言うには長い年月だけど、それ以前に何万年とかけてきたんだから誤差みたいなものではあるよねー。
もしかしたら実はまだ生きてて、僕や他の冒険者総出で戦わなきゃいけないとかって展開あるかも? みたいな心構えは一応してたんだけど、死んでるんならそれに越したことはないよね。
はーよかったーってみんな、安堵のため息を漏らして済ましてるんだけど……ただ一人、レリエさんだけはやっぱり異なる反応を見せた。
静かに跪き、両手を前に組んで祈りを捧げるように俯き出したんだ。
塔から放たれる光は暗闇の世界を太陽もないままに強く照らし、はるか地平線の向こうまでさえ明確に映している。
これならずいぶん遠くまで見られそうだよー。
意気揚々と視線を外界へ移す僕達。
するとすぐさま目に見えてわかるほどの異様な光景に、言葉を失うことになってしまった。
「…………!! これ、は」
「……樹海?」
「見渡すばかりの樹々、木々……」
そこにあったのは、一言で言えば自然だ。
濃い緑。地表をどこまでも埋め尽くす、異常繁殖したような木々の連なり。
まさしく樹海だよー。
どこにも人工物は見当たらない。樹海に呑み込まれたのか、はたまた潰されたのか。数万年も立てばそりゃあこうもなるかもしれないね。
古代文明の痕跡どころじゃない、人間の営みの痕跡さえ欠片も残ってないや。なるほど、これは冒険者達も微妙な反応を返すはずだよー。
だけど驚愕はそれだけじゃない。僕達より先に、視線を遠い彼方へ向けていたレリエさんが最初にソレに気付いた。
「あ、あれは……!!」
「レリエさん?」
「どこ向いてるでござる? ずーっと向こ──!?」
震える声で僕らを促す彼女につられ、地平線の彼方を見る。そして目に入ってきた光景に、僕らは今度こそ絶句した。
──暗雲にも似た巨体がある。陸地に大きく聳え立つ、黒い闇の塊だ。
雲じゃない。かといって山でもない。それはおそらく生物だ。顔がどこかとか、胴体とか手足がどこかが判然としないけど、それは明らかに生物のフォルムをしている。
サクラさんが、唖然とした様子で我を取り戻して叫んだ。
「な、なんじゃありゃ!? でござる! 雲!? いやまさか、や、山!?」
「にしては形がおかしい! ……まるで、動物のような」
「虫にも、獣にも、魚にも見える……けど、何か、残骸めいているような気がしますが……?」
黒ずんだ巨体は遠目からでは詳しいところはわからない。近づいて調べる必要があるだろうけど、少なくとも山じゃないのは間違いない。
いろんな動物の面影を残した、合体させたかのような奇妙で恐ろしい、見ているだけで背筋が凍りつくような姿をしてるよー。
アレが何か、知るはずもないけど僕にはなんとなく分かった。
きっとアレなんだ、古代文明を滅ぼしたのは。人に作られ、暴走して、そしてすべてを食らってみせた化物の中の化物。
アレを殺すために、僕はきっと生み出されたんだ。
「まさか、あれが、神?」
「そんな……あのようなモノが、人の手で生み出されたと!?」
「間違いないわ……わ、忘れるわけがない。あの姿、アレは紛れもなく私が、眠りに就く前に見たのと同じモノ。古代文明を滅ぼした、元凶!!」
「無限エネルギーを宿した、神……」
怯えも露にレリエさんが叫んだ。遠く、こちらを見ている冒険者達もやはりか、と息を呑む。
地下世界が作られるきっかけとなった、つまりは僕達の世界を生み出すきっかけとなった生命。あるいは本当に、僕らにとっての神と言えるかもしれない。
そんな生き物の成れの果てが、視界の先に映る巨躯だった。
そう……成れの果て。最初に見た時点でわかっていたけど、改めて認識するよ。
アレはもう、死んでいる。
「死んでる……っぽいでござるな? 劣化はあまりしてないみたいでござるが」
「うん、見るからに生命を感じない。アレは間違いなく死んでるよー」
「あの神の死をもってソウマくんが計画から解き放たれたと考えれば、骸は10年くらい前まで生きてたことになるからね。古代文明の痕跡そのものはどうやら数万年の時に呑まれて樹海に消えたようだけど、アレだけはつい最近まで生きていたことになる」
「劣化のなさはそのせいか……!」
生きている生命が放つ気配を、あの巨躯からは感じられない。もう完全に死んでいるんだと思う。サクラさんも同じ見解だし、そこは間違いないね。
モニカ教授の推論からすると、アレはつい10年前くらいまでは生きていたことになる。ついって言うには長い年月だけど、それ以前に何万年とかけてきたんだから誤差みたいなものではあるよねー。
もしかしたら実はまだ生きてて、僕や他の冒険者総出で戦わなきゃいけないとかって展開あるかも? みたいな心構えは一応してたんだけど、死んでるんならそれに越したことはないよね。
はーよかったーってみんな、安堵のため息を漏らして済ましてるんだけど……ただ一人、レリエさんだけはやっぱり異なる反応を見せた。
静かに跪き、両手を前に組んで祈りを捧げるように俯き出したんだ。