古代文明が偶然到達した、無限エネルギー……その媒介者とも言える謎の生命体。
ありえないはずの理論、ありえないはずの存在がいきなり完成の目をみることとなり、当時の世界も大いに困惑し、けれどあまりに画期的なことに喜びをもって迎えたそうだよー。
「現代においてはもちろん、古代文明においても前代未聞のことだったみたいです。すぐさまその生命体についての研究は進み、あっという間により効率よく、より大きなエネルギーを生み出す個体が製造されていきました」
「……ソレは多種多様な動物の遺伝子を与えられ、次第にサイズを大きなものにしていった。大きければ大きいほどに、ソレが生み出すエネルギーもまた、巨大で強いものになっていたから」
「レリエさん?」
レイアの説明に、レリエさんが補足するように付け足していく。その表情は暗く、どこか陰鬱なものを纏っている。
その生命体については当然、古代文明人であるレリエさんも知ってるんだね……でもヤミくんやヒカリちゃんは微妙に首を傾げている。たぶん双子の場合はしっかりしていてもまだまだ子供だし、よくわからないことも多いんだと思うよー。
本物の古代文明人による話を、聞けるなんて貴重な機会だ。
他の冒険者達も耳を傾ける中、レリエさんはさらに続けて、自嘲するように笑いながら語った。
「やがては犬より少し大きいサイズにまで進化させられたソレを、当時の人類は大量量産した……傲慢にも、命を弄んだのよ。そうして生み出したモノに、皮肉かどうか知らないけれど"神"なんて名前をつけて、ね」
「"神"……って、さっきの!」
タイムリーなんだかどうかは知らないけれど、いろいろ話が繋がってきた感じがあるよー。
さっき僕とリューゼとレイアでやっつけたあの、よくわかんない黒い毛玉の化物の──アレをエウリデ王は"神"だとか抜かしてたけど、そうかそういうことなんだねー。
つまりアレは古代文明にも存在していた生命体で、その名もそのものずばり"神"だったと。
犬より少し大きいサイズって言うけど、さっきのは相当大きかったのは、まあ個体差があるのかもねー。
僕の気づきを、レイアが肯く。
「そう。エウリデはどうやってか"神"を再現してみせた。いえ、再現と言うにはあまりにも杜撰で、かつ完成度の低いものだけど……それでも複製してみせたんだよ。それがさっき、私達でどうにかした化物の正体だね」
「ふむ……しかし、そんな恐ろしいものを生み出していた古代文明がそれでも滅びるか。もしや、それもその神とやらが関わっていたりするか?」
「御名答。関わると言いますか、直接の原因ですけどね」
「…………!?」
続けて明かされる真実。さっきの化物の大元となった"神"こそが、古代文明世界を滅ぼしたっていうの!?
てことは古代文明って、自分達が生み出して便利に使おうとしていた生き物に滅ぼされたってことになるじゃん!
オカルト雑誌なんかだと古代文明の滅亡した原因は自然災害だとも、あるいは最終戦争の果てだとも言われていた。でもまさか、自分達の都合で弄んだ命によって終焉を迎えさせられただなんて……!
愕然とする僕らへ、レイアはなおも続けて告げた。
「そう……古代文明は自ら生み出した"神"に、滅ぼされました。無限エネルギーに目が眩んだ当時の人類が、この資料を遺した者達が書き残していた"禁忌中の禁忌"とやらに触れたのです」
「禁忌?」
「……神とヒトの融合。神にヒトの、遺伝子と呼ばれるなんらかの要素を組み込み、またヒトに神の遺伝子を埋め込んだのです」
語るレイアの表情は常に険しく、対してレリエさんの表情はひどく沈痛だ。どこか恥じ入るようにすら見えるのは、自分達の行いの末路を悔やんでいるからとか、なんだろうか?
遺伝子……なんて聞いたことないものだけど、人間を構成する何かしらを神に投入し、また逆のことも行ったってのはなんとなく把握するよー。
それを禁忌中の禁忌と呼んだ、資料室の主達。どうやら相当エグい、それでいて恐るべきことをしてしまったみたいだね、当時の人類ってのはさあ。
「行った研究所はたった一箇所、たった一人の狂気の科学者による仕業でしたが、それこそが絶対に踏み越えてはならない一線でした。結果として生まれたモノは、神よりも不完全でかつ、人の要素を色濃く受け継いでしまった。つまりね──」
「──食事をする機能があってしまったのよ、その神には」
レイアの言葉を引き継ぐように、レリエさんがその行為、生み出された禁忌の"神"の特性を告げた。
食事をする機能──捕食行為。
その一言で、かつての古代文明の終わりの光景が微かに……ほんのちょっぴりだけど予想がついちゃったよ、僕ー。
ありえないはずの理論、ありえないはずの存在がいきなり完成の目をみることとなり、当時の世界も大いに困惑し、けれどあまりに画期的なことに喜びをもって迎えたそうだよー。
「現代においてはもちろん、古代文明においても前代未聞のことだったみたいです。すぐさまその生命体についての研究は進み、あっという間により効率よく、より大きなエネルギーを生み出す個体が製造されていきました」
「……ソレは多種多様な動物の遺伝子を与えられ、次第にサイズを大きなものにしていった。大きければ大きいほどに、ソレが生み出すエネルギーもまた、巨大で強いものになっていたから」
「レリエさん?」
レイアの説明に、レリエさんが補足するように付け足していく。その表情は暗く、どこか陰鬱なものを纏っている。
その生命体については当然、古代文明人であるレリエさんも知ってるんだね……でもヤミくんやヒカリちゃんは微妙に首を傾げている。たぶん双子の場合はしっかりしていてもまだまだ子供だし、よくわからないことも多いんだと思うよー。
本物の古代文明人による話を、聞けるなんて貴重な機会だ。
他の冒険者達も耳を傾ける中、レリエさんはさらに続けて、自嘲するように笑いながら語った。
「やがては犬より少し大きいサイズにまで進化させられたソレを、当時の人類は大量量産した……傲慢にも、命を弄んだのよ。そうして生み出したモノに、皮肉かどうか知らないけれど"神"なんて名前をつけて、ね」
「"神"……って、さっきの!」
タイムリーなんだかどうかは知らないけれど、いろいろ話が繋がってきた感じがあるよー。
さっき僕とリューゼとレイアでやっつけたあの、よくわかんない黒い毛玉の化物の──アレをエウリデ王は"神"だとか抜かしてたけど、そうかそういうことなんだねー。
つまりアレは古代文明にも存在していた生命体で、その名もそのものずばり"神"だったと。
犬より少し大きいサイズって言うけど、さっきのは相当大きかったのは、まあ個体差があるのかもねー。
僕の気づきを、レイアが肯く。
「そう。エウリデはどうやってか"神"を再現してみせた。いえ、再現と言うにはあまりにも杜撰で、かつ完成度の低いものだけど……それでも複製してみせたんだよ。それがさっき、私達でどうにかした化物の正体だね」
「ふむ……しかし、そんな恐ろしいものを生み出していた古代文明がそれでも滅びるか。もしや、それもその神とやらが関わっていたりするか?」
「御名答。関わると言いますか、直接の原因ですけどね」
「…………!?」
続けて明かされる真実。さっきの化物の大元となった"神"こそが、古代文明世界を滅ぼしたっていうの!?
てことは古代文明って、自分達が生み出して便利に使おうとしていた生き物に滅ぼされたってことになるじゃん!
オカルト雑誌なんかだと古代文明の滅亡した原因は自然災害だとも、あるいは最終戦争の果てだとも言われていた。でもまさか、自分達の都合で弄んだ命によって終焉を迎えさせられただなんて……!
愕然とする僕らへ、レイアはなおも続けて告げた。
「そう……古代文明は自ら生み出した"神"に、滅ぼされました。無限エネルギーに目が眩んだ当時の人類が、この資料を遺した者達が書き残していた"禁忌中の禁忌"とやらに触れたのです」
「禁忌?」
「……神とヒトの融合。神にヒトの、遺伝子と呼ばれるなんらかの要素を組み込み、またヒトに神の遺伝子を埋め込んだのです」
語るレイアの表情は常に険しく、対してレリエさんの表情はひどく沈痛だ。どこか恥じ入るようにすら見えるのは、自分達の行いの末路を悔やんでいるからとか、なんだろうか?
遺伝子……なんて聞いたことないものだけど、人間を構成する何かしらを神に投入し、また逆のことも行ったってのはなんとなく把握するよー。
それを禁忌中の禁忌と呼んだ、資料室の主達。どうやら相当エグい、それでいて恐るべきことをしてしまったみたいだね、当時の人類ってのはさあ。
「行った研究所はたった一箇所、たった一人の狂気の科学者による仕業でしたが、それこそが絶対に踏み越えてはならない一線でした。結果として生まれたモノは、神よりも不完全でかつ、人の要素を色濃く受け継いでしまった。つまりね──」
「──食事をする機能があってしまったのよ、その神には」
レイアの言葉を引き継ぐように、レリエさんがその行為、生み出された禁忌の"神"の特性を告げた。
食事をする機能──捕食行為。
その一言で、かつての古代文明の終わりの光景が微かに……ほんのちょっぴりだけど予想がついちゃったよ、僕ー。