久しぶりの再会なのは何もレイアだけじゃない。カインさんとはこないだ会ったばかりだからそれはともかく、ウェルドナーさんのほうは本当にレイア同様、3年ぶりの顔合わせになる。
茶髪の刈り上げルックスのマッチョ、彫りも深くてダンディなナイスミドル。それがウェルドナー・クラウン・バーゼンハイムさんだ。
レイアにとっては実の叔父、そして調査戦隊から今に至るまで変わらず寄り添い続けて支えてきてくれた腹心中の腹心。
そんな彼は当然だけど僕にはあまり、いい顔を向けはしないでいる。ていうか言っちゃうと若干不機嫌だよー。
「グンダリ……3年ぶりだな」
「ご、御無沙汰です、ウェルドナーさん」
厳しい視線を向けてくる彼に、僕はなかなか視線を合わせられない。レイアと同じかそれ以上に僕を恨んでいるだろう人なんだ、どの面下げてって話だよ、ほんとー。
正直、今この場で殴り飛ばされても一発二発は甘んじて受けようとさえ思うよ。それ以上になるとカウンター入れると思うけど、そこまでは彼に与えられて然るべき当然の権利だと思うし。
ごくり、とつばを呑む。
周囲もヒヤヒヤした感じで僕らを見てくる中、ウェルドナーさんはふう、と息を吐き、そして言った。
「お前の事情も分かってる。そこまで怒っちゃいない……まったく怒ってないわけでもないけどな」
「……ご迷惑をおかけしました。レイアも、ごめんなさい。僕は3年前、本当に取り返しの付かないことをしたと──」
「まあまあ! その話はまた後にしよ、ソウくん!」
穏やかな顔つきのウェルドナーさんは、けれど瞳の奥には複雑な色を宿したままだ。いろいろ、我慢してくれてるんだよー。
それが余計申しわけなく、僕は意を決して土下座でもなんでもして謝ろうと口を開いた。その矢先、レイアが割って入って僕に抱きついて制止してくる。
至近距離にとんでもない美女の顔。
普段の僕なら慌てるなり喜ぶなり浮かれるなりだけど、今この時ばかりはそんなリアクションを取ることもできずただ、彼女の顔をすぐ傍から見つめてつぶやくしかできない。
「レイア……いやでも、僕は」
「またまやらなきゃいけないことがあるからさ。ソウくんとの話はそこが一段落してからにしようよ。ねえ、叔父さん?」
「そうだな……俺もレイアも言いたいことは同じだ。全部片付けてからレイアとお前が腹を割って話して、改まった話はそれからにした方が良いさ。お互いにな」
「ウェルドナーさん……」
化物を倒して、エウリデ王を捕らえて、この国が少しずつ変わっていく予感を抱かせて。それでもまだ、僕との決着は後にして、先にやらなきゃいけないようなことがあるんだろうか?
……レイア達がエウリデに舞い戻ってきた理由、それそのものに関することなんだろうね、きっと。
是非もない。そもこの件については僕に意見する権利も資格もないんだ、彼女達の予定に沿って、今は話を聞くことにしよう。
力なくも納得した僕を、一度優しく抱きしめてレイアは離れた。その際に何故かシアンさんとサクラさんを見て笑ってたけどなんなんだろう? 二人の顔がちょっと強張ってるし。こわいよー。
ともあれ数歩分、距離を空けてレイアがウェルドナーさんへと告げた。
「さてと。叔父さん、ここは任せてもいいかな。私はソウくんやソウくんの関係者の人達にあれこれ説明したいし」
「もちろんだ、エウリデについては俺やカインに任せろ……貴族連中もここから制圧して、少しでもマシなやつに国政をさせにゃならん。そのへんの雑務は俺達で請け負うさ」
どうやらこの場はウェルドナーさんに任せて、レイア自身は僕ら相手にいろいろと話しを打ち明けるつもりみたいだ。
わざわさこう言うからには、何かしら協力してほしいことがあったりするんだろうね。
ウェルドナーさんとカインさんも揃って頷き、拘束されているエウリデ王を見やる。完全に心が折れたのか力なく沈む彼の姿は、王の恰好をしただけのただの中年にしか見えない。
すっかり腑抜けた国王に舌打ち一つして、ウェルドナーさんはぼやくように言った。
「まあ看板は変わらずこの馬鹿野郎だから、民達はしばらく変化を実感することはないだろうが……そのくらいゆっくりやらないと、ただただ国が乱れるだけなんだろうな」
「そうだね……政治体制を緩やかに変革するのは、平和裏にやるんだったら長い目で見ていかなきゃならないんだよ。いくつもの国を見てきて、そのことは私達もよく分かってるつもりだよね」
「違いない」
叔父と姪、顔を見合わせて笑う。エウリデをなるべく穏便な形で、緩やかに時間をかけてでも平和的に変えていくことに異論もないようで、周囲の彼女達の部下も頷いている。
この3年、レイア達もレイア達なりにいろいろ見てきたんだろうね……なんとなしそれが伺えるやり取りだよー。
「さて。じゃあソウくんはじめ新世界旅団に戦慄の群狼、あとベルアニーさんにも話をしようか……私達がこのタイミングでエウリデに来た、その理由をね」
翻って僕に告げるレイア。
エウリデへ戻ってきた理由。その目的について、彼女の口からいよいよ聞き出せる時が来たんだね。
茶髪の刈り上げルックスのマッチョ、彫りも深くてダンディなナイスミドル。それがウェルドナー・クラウン・バーゼンハイムさんだ。
レイアにとっては実の叔父、そして調査戦隊から今に至るまで変わらず寄り添い続けて支えてきてくれた腹心中の腹心。
そんな彼は当然だけど僕にはあまり、いい顔を向けはしないでいる。ていうか言っちゃうと若干不機嫌だよー。
「グンダリ……3年ぶりだな」
「ご、御無沙汰です、ウェルドナーさん」
厳しい視線を向けてくる彼に、僕はなかなか視線を合わせられない。レイアと同じかそれ以上に僕を恨んでいるだろう人なんだ、どの面下げてって話だよ、ほんとー。
正直、今この場で殴り飛ばされても一発二発は甘んじて受けようとさえ思うよ。それ以上になるとカウンター入れると思うけど、そこまでは彼に与えられて然るべき当然の権利だと思うし。
ごくり、とつばを呑む。
周囲もヒヤヒヤした感じで僕らを見てくる中、ウェルドナーさんはふう、と息を吐き、そして言った。
「お前の事情も分かってる。そこまで怒っちゃいない……まったく怒ってないわけでもないけどな」
「……ご迷惑をおかけしました。レイアも、ごめんなさい。僕は3年前、本当に取り返しの付かないことをしたと──」
「まあまあ! その話はまた後にしよ、ソウくん!」
穏やかな顔つきのウェルドナーさんは、けれど瞳の奥には複雑な色を宿したままだ。いろいろ、我慢してくれてるんだよー。
それが余計申しわけなく、僕は意を決して土下座でもなんでもして謝ろうと口を開いた。その矢先、レイアが割って入って僕に抱きついて制止してくる。
至近距離にとんでもない美女の顔。
普段の僕なら慌てるなり喜ぶなり浮かれるなりだけど、今この時ばかりはそんなリアクションを取ることもできずただ、彼女の顔をすぐ傍から見つめてつぶやくしかできない。
「レイア……いやでも、僕は」
「またまやらなきゃいけないことがあるからさ。ソウくんとの話はそこが一段落してからにしようよ。ねえ、叔父さん?」
「そうだな……俺もレイアも言いたいことは同じだ。全部片付けてからレイアとお前が腹を割って話して、改まった話はそれからにした方が良いさ。お互いにな」
「ウェルドナーさん……」
化物を倒して、エウリデ王を捕らえて、この国が少しずつ変わっていく予感を抱かせて。それでもまだ、僕との決着は後にして、先にやらなきゃいけないようなことがあるんだろうか?
……レイア達がエウリデに舞い戻ってきた理由、それそのものに関することなんだろうね、きっと。
是非もない。そもこの件については僕に意見する権利も資格もないんだ、彼女達の予定に沿って、今は話を聞くことにしよう。
力なくも納得した僕を、一度優しく抱きしめてレイアは離れた。その際に何故かシアンさんとサクラさんを見て笑ってたけどなんなんだろう? 二人の顔がちょっと強張ってるし。こわいよー。
ともあれ数歩分、距離を空けてレイアがウェルドナーさんへと告げた。
「さてと。叔父さん、ここは任せてもいいかな。私はソウくんやソウくんの関係者の人達にあれこれ説明したいし」
「もちろんだ、エウリデについては俺やカインに任せろ……貴族連中もここから制圧して、少しでもマシなやつに国政をさせにゃならん。そのへんの雑務は俺達で請け負うさ」
どうやらこの場はウェルドナーさんに任せて、レイア自身は僕ら相手にいろいろと話しを打ち明けるつもりみたいだ。
わざわさこう言うからには、何かしら協力してほしいことがあったりするんだろうね。
ウェルドナーさんとカインさんも揃って頷き、拘束されているエウリデ王を見やる。完全に心が折れたのか力なく沈む彼の姿は、王の恰好をしただけのただの中年にしか見えない。
すっかり腑抜けた国王に舌打ち一つして、ウェルドナーさんはぼやくように言った。
「まあ看板は変わらずこの馬鹿野郎だから、民達はしばらく変化を実感することはないだろうが……そのくらいゆっくりやらないと、ただただ国が乱れるだけなんだろうな」
「そうだね……政治体制を緩やかに変革するのは、平和裏にやるんだったら長い目で見ていかなきゃならないんだよ。いくつもの国を見てきて、そのことは私達もよく分かってるつもりだよね」
「違いない」
叔父と姪、顔を見合わせて笑う。エウリデをなるべく穏便な形で、緩やかに時間をかけてでも平和的に変えていくことに異論もないようで、周囲の彼女達の部下も頷いている。
この3年、レイア達もレイア達なりにいろいろ見てきたんだろうね……なんとなしそれが伺えるやり取りだよー。
「さて。じゃあソウくんはじめ新世界旅団に戦慄の群狼、あとベルアニーさんにも話をしようか……私達がこのタイミングでエウリデに来た、その理由をね」
翻って僕に告げるレイア。
エウリデへ戻ってきた理由。その目的について、彼女の口からいよいよ聞き出せる時が来たんだね。