華麗にして清廉なる剣技をもって、化物の繰り出す触手攻撃をすべて撃ち落とした騎士団長シミラ・サクレード・ワルンフォルース。
半月もの間地下牢に押し込まれ、水のみで生き延びることを余儀なくされてなお今の動きを見せられるなんて、とてつもない技量だよー。
才覚もさることながらやっぱり努力、日々の鍛錬をひたすら積み重ねてきたんだろうね。天才では決してないけど、負けないくらいに輝き煌めく秀才の姿がそこにはあるよー。
「おおっ! やるじゃねーかシミラァ!! やっぱテメェは群狼入りだな、決定だ決定!」
「リューゼさん……すみませんがその話はあとにしましょう。言ってる場合でもありません」
『ウォアアアアアア!! ウォアアアアアアッ!!』
シミラ卿の成長ぶりを目の当たりにしてリューゼが吼えた。久しぶりにあった妹分が、予想以上に強くなっていたことが嬉しいんだろうね。
もっとも当のシミラ卿その人からは今それどころじゃないでしょ? と素っ気ない対応。
まあそりゃそうだ、さすがに今はシミラ卿に新世界旅団か戦慄の群狼かどっちにつく? なんて聞いてる場合じゃないからね。
それが証拠にほら、化物が吠えた。凍りつくような雄叫び、どこから出してるんだろうね? 口らしいものもないのに。
改めて、これのどこが"神様"なんだか分からなくなるよー。
内心でエウリデ王のセンスに首を傾げていると、リューゼが不敵に笑ってザンバーを構え直した。
「へっ、バケモンが……! オレ様の斬撃を受けてノーダメたぁ畏れ入るぜ、殺しがいがあらァ!」
「私とジンダイで補助を、攻め手はリューゼさん、任せます……ソウマ!」
「はいっ!? え、何!?」
「杭打ちくんを取りに行け!!」
急な指示にビックリ。シミラ卿、僕に戦線を離脱しろって言うの?
たしかに今しがた、僕はこの化物を道連れてでも杭打ちくんの置いてある場所まで移動しようとしてたけど……この化物を仕留め切るには杭打ちくんを持った僕が必要だと、シミラ卿も咄嗟に判断したって言うの?
戸惑う僕に、リューゼが重ねて声を張った。化物に斬りかかりながら、察しの悪い僕を叱咤するように叫ぶ。
「火力で言えばテメェの杭打ちがトップだ! 見た感じこいつァ相当タフなやつだ、一息に押し切っちまえ!」
「ここは我々が受け持つ! ……姉を頼れ、弟よ」
「…………うん!! ありがとうリューゼ、シミラさん!」
かつての仲間達から激励され、僕は駆け出す。リューゼにまで言われたら動かないわけにもいかないよ、この場面には杭打ちくんが……冒険者"杭打ち"が必要なんだ!
王城正門まで多少の距離があるけど関係ない、全速力だ。風より速く駆け抜ける中で背後、リューゼが部下達に号を放っているのを僕は耳にした。
「っしゃてめぇら、ソウマ一人で食い止めてたんだ! 気合い入れて行くぞオラァッ!!」
「うす、姉御ォ!」
「ヘッ! 杭打ちだかなんだか知りやせんがあんなガキで止めてたような雑魚、俺一人でもぎょええぇえええあ!?」
『ウォオオオオアアアアアアアアアアッ!!』
うわーっ、あからさまなセリフを吐いた人が途端に化物の咆哮とともに断末魔の叫びを上げたーっ!?
死んではなさそうで気配はあるけど、たぶん吹き飛ばされるかなんかしたんだね、声が遠ざかっていく。
僕が一人で、しかも素手で止めてたもんだから油断しちゃったんだねー……
どうあれリューゼからしてみれば恥ずかしいことこの上ないだろう。自慢の部下のつもりが僕も敵も舐めてかかって瞬殺されてるんだもん。
案の定次の瞬間、彼女の怒声が周囲に響き渡った。
「このスカタン! 言ったそばから舐めてかかってんじゃねえ、ぶち殺すぞボケェッ!!」
「しゅ、しゅぃやしぇん……」
「チッ、テメェは引っ込んでろ! 今の見たろてめぇら、腹括れよコラァ!」
「ウッス!!」
さすがにさっきみたいな醜態を2度も晒したら、本気でリューゼに殺されるんだろう。
戦慄の群狼のみなさんの緊張度合いが一気に高まった。もうこれリューゼと化物、どっちがモンスターか分かんないねー。
さておき走り抜ける。まっすぐ行ってこの先、壁に沿って左折すればたぶん正門のはずだ。
杭打ちくんはあの重量だ、まともに持てずに来た時、置いた通りのままにされているはずだ。速やかにそれを回収して、戦線に復帰する!
「行くぜ化物ォォォッ!! ソウマが杭打ちくん持ってくるまでもねェ、オレ様の手でカタァ付けたらァァァッ!!」
『ヴォオオオオアアアアアアアアアアアアッ!!』
「団長に続けいっ! ぶっ殺せーぇっ!!」
「どこだろうとモンスターはモンスターだ! やっちまうぞコラァ!!」
本格的に戦闘を開始したリューゼ達の声を背に僕は走る。
行くよ杭打ちくん、僕の相棒……! 一緒に神様もどきをぶち抜くよー!
半月もの間地下牢に押し込まれ、水のみで生き延びることを余儀なくされてなお今の動きを見せられるなんて、とてつもない技量だよー。
才覚もさることながらやっぱり努力、日々の鍛錬をひたすら積み重ねてきたんだろうね。天才では決してないけど、負けないくらいに輝き煌めく秀才の姿がそこにはあるよー。
「おおっ! やるじゃねーかシミラァ!! やっぱテメェは群狼入りだな、決定だ決定!」
「リューゼさん……すみませんがその話はあとにしましょう。言ってる場合でもありません」
『ウォアアアアアア!! ウォアアアアアアッ!!』
シミラ卿の成長ぶりを目の当たりにしてリューゼが吼えた。久しぶりにあった妹分が、予想以上に強くなっていたことが嬉しいんだろうね。
もっとも当のシミラ卿その人からは今それどころじゃないでしょ? と素っ気ない対応。
まあそりゃそうだ、さすがに今はシミラ卿に新世界旅団か戦慄の群狼かどっちにつく? なんて聞いてる場合じゃないからね。
それが証拠にほら、化物が吠えた。凍りつくような雄叫び、どこから出してるんだろうね? 口らしいものもないのに。
改めて、これのどこが"神様"なんだか分からなくなるよー。
内心でエウリデ王のセンスに首を傾げていると、リューゼが不敵に笑ってザンバーを構え直した。
「へっ、バケモンが……! オレ様の斬撃を受けてノーダメたぁ畏れ入るぜ、殺しがいがあらァ!」
「私とジンダイで補助を、攻め手はリューゼさん、任せます……ソウマ!」
「はいっ!? え、何!?」
「杭打ちくんを取りに行け!!」
急な指示にビックリ。シミラ卿、僕に戦線を離脱しろって言うの?
たしかに今しがた、僕はこの化物を道連れてでも杭打ちくんの置いてある場所まで移動しようとしてたけど……この化物を仕留め切るには杭打ちくんを持った僕が必要だと、シミラ卿も咄嗟に判断したって言うの?
戸惑う僕に、リューゼが重ねて声を張った。化物に斬りかかりながら、察しの悪い僕を叱咤するように叫ぶ。
「火力で言えばテメェの杭打ちがトップだ! 見た感じこいつァ相当タフなやつだ、一息に押し切っちまえ!」
「ここは我々が受け持つ! ……姉を頼れ、弟よ」
「…………うん!! ありがとうリューゼ、シミラさん!」
かつての仲間達から激励され、僕は駆け出す。リューゼにまで言われたら動かないわけにもいかないよ、この場面には杭打ちくんが……冒険者"杭打ち"が必要なんだ!
王城正門まで多少の距離があるけど関係ない、全速力だ。風より速く駆け抜ける中で背後、リューゼが部下達に号を放っているのを僕は耳にした。
「っしゃてめぇら、ソウマ一人で食い止めてたんだ! 気合い入れて行くぞオラァッ!!」
「うす、姉御ォ!」
「ヘッ! 杭打ちだかなんだか知りやせんがあんなガキで止めてたような雑魚、俺一人でもぎょええぇえええあ!?」
『ウォオオオオアアアアアアアアアアッ!!』
うわーっ、あからさまなセリフを吐いた人が途端に化物の咆哮とともに断末魔の叫びを上げたーっ!?
死んではなさそうで気配はあるけど、たぶん吹き飛ばされるかなんかしたんだね、声が遠ざかっていく。
僕が一人で、しかも素手で止めてたもんだから油断しちゃったんだねー……
どうあれリューゼからしてみれば恥ずかしいことこの上ないだろう。自慢の部下のつもりが僕も敵も舐めてかかって瞬殺されてるんだもん。
案の定次の瞬間、彼女の怒声が周囲に響き渡った。
「このスカタン! 言ったそばから舐めてかかってんじゃねえ、ぶち殺すぞボケェッ!!」
「しゅ、しゅぃやしぇん……」
「チッ、テメェは引っ込んでろ! 今の見たろてめぇら、腹括れよコラァ!」
「ウッス!!」
さすがにさっきみたいな醜態を2度も晒したら、本気でリューゼに殺されるんだろう。
戦慄の群狼のみなさんの緊張度合いが一気に高まった。もうこれリューゼと化物、どっちがモンスターか分かんないねー。
さておき走り抜ける。まっすぐ行ってこの先、壁に沿って左折すればたぶん正門のはずだ。
杭打ちくんはあの重量だ、まともに持てずに来た時、置いた通りのままにされているはずだ。速やかにそれを回収して、戦線に復帰する!
「行くぜ化物ォォォッ!! ソウマが杭打ちくん持ってくるまでもねェ、オレ様の手でカタァ付けたらァァァッ!!」
『ヴォオオオオアアアアアアアアアアアアッ!!』
「団長に続けいっ! ぶっ殺せーぇっ!!」
「どこだろうとモンスターはモンスターだ! やっちまうぞコラァ!!」
本格的に戦闘を開始したリューゼ達の声を背に僕は走る。
行くよ杭打ちくん、僕の相棒……! 一緒に神様もどきをぶち抜くよー!