突然現れた、3年前に僕を調査戦隊から出ていくよう促したエウリデの大臣さん。前と同じく尊大で居丈高な態度だけど、裏腹に頭の砂漠化は進行しているみたい。大変だねー。
どうやら国王の命によって僕ら、交渉を望む冒険者達を案内しに来たみたいだ。現場の騎士達が一も二もなく跪く中、シアンさんと僕とサクラさんを馬車へと招く。
「こういう馬車に乗るの、初めてだよー」
「これを最後にしたいでござるね。何しろデザインから趣味から最悪でござるし」
「……ノーコメントで」
乗りながらも小声でやり取りする。豪華なのは良いんだけど、いかんせん金ピカすぎて目に悪いしオシャレというより成金的だしで、少なくとも僕とサクラさんの趣味には合わないみたいだよ。
シアンさんだけ微妙な顔をして言及を避けたのは、彼女のセンスもなんだかんだ貴族的ってことなのかな? あるいはもしかしたら、お家の馬車にもこういうのがあるのかもね。
ま、ともあれ僕らは馬車に乗り込んだ。広々とした客車内には大臣と、両脇を固める騎士が二人。
近衛か……表のぼんくらどもよりは多少やるかな? それでも圧倒的に実力差がある僕らに対して侮蔑の視線を隠そうとしないあたり、五十歩百歩って感じではあるけどー。
席につき、同時に馬車が走り出す。
道すがら大臣が僕らに話しかけてくるんだけど……やっぱりこの人、あの時の大臣さんだよー、厭味ったらしいったらないの!
「エーデルライトの小娘に、ふん……3年前に放逐したはずのスラムの虫けらが。なんの因果で結びついたのやら」
「冒険者だからねー。同胞ならどこでどういう風になっておかしくはないんだよ」
スラムの虫けら。前にも聞いたし何度も聞いたフレーズを躊躇なく使うんだから、なんともまあ典型的なエウリデ貴族だよといっそ、感心すら抱くよ。
こんなのは相手するだけ無駄だし、無難に相手をしておく。どうせ王城行って、交渉が決裂したらその時点で敵対するんだ。脅すにしてもそれからでいいだろうしね。
まあ、でもイラッとするのはたしかだし。
軽くカウンターでも入れようかなー? 僕はにっこり笑って大臣さんに話しかけた。
「かくいう大臣さんは、ずいぶん頭が寂しくなりましたねー? そのくせお腹は据え置きで、ははは! まるでダルマさんみたい」
「貴様……」
「ぷふふっ! 達磨とはまた、なんともご利益の有りそうな話でござるなあ」
ちょこっと3年前と比較しただけなんだけど、ずいぶん煽られるのに弱いよねー。真っ赤になってそれこそダルマみたいな大臣さんを見て、くすりと笑う。
サクラさんがそんなやり取りを見て思わず吹き出した。ダルマはたしかヒノモト発祥の文化というか、マスコット? 縁起物? だし、どうにか共感を得られたみたいだよー。
揶揄された大臣と両隣の騎士達が激昂するのを空気で感じる。
シアンさんが隣でため息をつくのを見て、後で謝らなきゃな〜って思っていると、大臣さんは僕よりサクラさんに矛先を向けたみたいだった。
せせら笑って彼女を嘲る。
「ヒノモト人……未開の猿が、高位の人間への接し方も知らぬとは。野蛮人とは哀れなものだな」
「いやー馬鹿やらかして調査戦隊なんていう現代の神話を崩壊せしめたどこぞの豚どもよりかは人間でござるよ。ははははっ! 贅肉だらけの身体以上に、腐れたその魂が何より哀れなもんでござる!」
「貴様っ、我々を舐め──」
「──そりゃこっちのセリフでござる」
売り言葉に買い言葉。未開の猿なんてあからさまな言葉遣いで喧嘩を売った大臣だけど、それ以上に辛辣、かつ直接的なサクラさんの物言いにバッサリと返り討ちに遭っちゃった。
慌てて近衛騎士達が激怒し、威圧的に彼女を脅そうとするものの。こちらはこちらでSランク冒険者の抜き身の殺意、本気の威圧を受けて物理的に黙らされてしまっていた。
「っ、貴様っ……!!」
「政治だの国だのに関わる輩なんざ、いつでもどこでもゴミ以下のカスしかいないもんでござるが。エウリデはなおのこと酷いでござるな、もういっそ滅んだほうがマシでござるかも」
「それは、国家反逆だぞ……!」
「民あっての国でござる。民をないがしろにするなら国ごと滅ぶのが道理でござろ。ま、放っといても早晩自滅するでござろうがなこんな国」
殺気に塗れた笑顔で嗤う、サクラさんはなんなら今すぐにでも暴れかねない迫力を出している。
実際、彼女からしてみればサクッと全員撫で斬りにするのが一番手っ取り早いんだろうなーとは思うよ。ヒノモトの文化的に、基本話が早いほうが性に合うみたいだし。
とはいえこれから交渉の場で、僕らは一応、仮にでも、曲りなりにでも使者としているわけで。
さすがに一線は超えさせられないよとシアンさんが割って入るのだった。
「サクラ、そろそろ止めておきなさい」
「む……」
「一応は交渉するわけなのですから、喧嘩腰はよくありません。それはそちらにも言えますがね、大臣閣下?」
「小娘が……武力を得て思い上がったか、生意気な」
「そう思ってもらって構いません。ふふふ」
サクラさんを止めつつ大臣にもチクリ。
嫌味を言われても意味深に微笑むことでサラリと交わすシアンさんこそ、この中では一番大物然としてる気がするねー。
どうやら国王の命によって僕ら、交渉を望む冒険者達を案内しに来たみたいだ。現場の騎士達が一も二もなく跪く中、シアンさんと僕とサクラさんを馬車へと招く。
「こういう馬車に乗るの、初めてだよー」
「これを最後にしたいでござるね。何しろデザインから趣味から最悪でござるし」
「……ノーコメントで」
乗りながらも小声でやり取りする。豪華なのは良いんだけど、いかんせん金ピカすぎて目に悪いしオシャレというより成金的だしで、少なくとも僕とサクラさんの趣味には合わないみたいだよ。
シアンさんだけ微妙な顔をして言及を避けたのは、彼女のセンスもなんだかんだ貴族的ってことなのかな? あるいはもしかしたら、お家の馬車にもこういうのがあるのかもね。
ま、ともあれ僕らは馬車に乗り込んだ。広々とした客車内には大臣と、両脇を固める騎士が二人。
近衛か……表のぼんくらどもよりは多少やるかな? それでも圧倒的に実力差がある僕らに対して侮蔑の視線を隠そうとしないあたり、五十歩百歩って感じではあるけどー。
席につき、同時に馬車が走り出す。
道すがら大臣が僕らに話しかけてくるんだけど……やっぱりこの人、あの時の大臣さんだよー、厭味ったらしいったらないの!
「エーデルライトの小娘に、ふん……3年前に放逐したはずのスラムの虫けらが。なんの因果で結びついたのやら」
「冒険者だからねー。同胞ならどこでどういう風になっておかしくはないんだよ」
スラムの虫けら。前にも聞いたし何度も聞いたフレーズを躊躇なく使うんだから、なんともまあ典型的なエウリデ貴族だよといっそ、感心すら抱くよ。
こんなのは相手するだけ無駄だし、無難に相手をしておく。どうせ王城行って、交渉が決裂したらその時点で敵対するんだ。脅すにしてもそれからでいいだろうしね。
まあ、でもイラッとするのはたしかだし。
軽くカウンターでも入れようかなー? 僕はにっこり笑って大臣さんに話しかけた。
「かくいう大臣さんは、ずいぶん頭が寂しくなりましたねー? そのくせお腹は据え置きで、ははは! まるでダルマさんみたい」
「貴様……」
「ぷふふっ! 達磨とはまた、なんともご利益の有りそうな話でござるなあ」
ちょこっと3年前と比較しただけなんだけど、ずいぶん煽られるのに弱いよねー。真っ赤になってそれこそダルマみたいな大臣さんを見て、くすりと笑う。
サクラさんがそんなやり取りを見て思わず吹き出した。ダルマはたしかヒノモト発祥の文化というか、マスコット? 縁起物? だし、どうにか共感を得られたみたいだよー。
揶揄された大臣と両隣の騎士達が激昂するのを空気で感じる。
シアンさんが隣でため息をつくのを見て、後で謝らなきゃな〜って思っていると、大臣さんは僕よりサクラさんに矛先を向けたみたいだった。
せせら笑って彼女を嘲る。
「ヒノモト人……未開の猿が、高位の人間への接し方も知らぬとは。野蛮人とは哀れなものだな」
「いやー馬鹿やらかして調査戦隊なんていう現代の神話を崩壊せしめたどこぞの豚どもよりかは人間でござるよ。ははははっ! 贅肉だらけの身体以上に、腐れたその魂が何より哀れなもんでござる!」
「貴様っ、我々を舐め──」
「──そりゃこっちのセリフでござる」
売り言葉に買い言葉。未開の猿なんてあからさまな言葉遣いで喧嘩を売った大臣だけど、それ以上に辛辣、かつ直接的なサクラさんの物言いにバッサリと返り討ちに遭っちゃった。
慌てて近衛騎士達が激怒し、威圧的に彼女を脅そうとするものの。こちらはこちらでSランク冒険者の抜き身の殺意、本気の威圧を受けて物理的に黙らされてしまっていた。
「っ、貴様っ……!!」
「政治だの国だのに関わる輩なんざ、いつでもどこでもゴミ以下のカスしかいないもんでござるが。エウリデはなおのこと酷いでござるな、もういっそ滅んだほうがマシでござるかも」
「それは、国家反逆だぞ……!」
「民あっての国でござる。民をないがしろにするなら国ごと滅ぶのが道理でござろ。ま、放っといても早晩自滅するでござろうがなこんな国」
殺気に塗れた笑顔で嗤う、サクラさんはなんなら今すぐにでも暴れかねない迫力を出している。
実際、彼女からしてみればサクッと全員撫で斬りにするのが一番手っ取り早いんだろうなーとは思うよ。ヒノモトの文化的に、基本話が早いほうが性に合うみたいだし。
とはいえこれから交渉の場で、僕らは一応、仮にでも、曲りなりにでも使者としているわけで。
さすがに一線は超えさせられないよとシアンさんが割って入るのだった。
「サクラ、そろそろ止めておきなさい」
「む……」
「一応は交渉するわけなのですから、喧嘩腰はよくありません。それはそちらにも言えますがね、大臣閣下?」
「小娘が……武力を得て思い上がったか、生意気な」
「そう思ってもらって構いません。ふふふ」
サクラさんを止めつつ大臣にもチクリ。
嫌味を言われても意味深に微笑むことでサラリと交わすシアンさんこそ、この中では一番大物然としてる気がするねー。