今回のデマ流布の件については概ね、ガルシアさん単独の犯行であると看做した僕達新世界旅団。
となると当のガルシアさん本人から事情を聞く必要があるわけなんだけど……彼は今朝方この家に帰ってきて、今もまだ自室で眠っているらしい。
おじさんがおもむろに立ち上がり、めちゃくちゃ怒った様子で僕らに告げてきた。
「あの馬鹿息子を今すぐ連れてくるから待っていてくれ。大迷宮深層調査戦隊が解散してからというもの、ずいぶん見守ってきたつもりだが今回ばかりは我慢ならん!」
「お、おじさん?」
「ガルシア! ガルシアー! 降りてこいっ、ガルシアっ!!」
怒髪天を衝くってこのことかなあ、怒り心頭って感じで息子さんの名前を叫びながらおじさん、リビングを出て行っちゃった。
おばさんはすっかり憔悴しちゃってて気の毒なくらいだ。レリエさんがそっと近づいて彼女の手を握りしめて慰めているけど、この人ホントに聖人みたいないい人だよー、惚れ直すよー。
で、モニカ教授はというと面白がった感じでシアンさんと話をしているし。
こっちはこっちで相変わらずのマイペースだよー。
「ほう? それではソウマくんには5年前からの縁があると。それではエーデルライト家も余計、エウリデによる彼の追放は荒れたことだろうね」
「そうですね……まず祖父が怒り、次いで父が政府に抗議しました。残念ながら解散を止めることはできませんでしたので、意味のないものでしたが」
「どうかな? 今のエウリデの、冒険者界隈そのものに対しての及び腰はおそらくそちら様のお家やその他、一部有力貴族からの抗議も大きく影響していると見るよ、私は」
スラッとした足を組んでセクシーに語る教授。白衣の下はシャツとジーンズとラフな格好で、スレンダーな体型だからすごく映えるねー。
そしてなんか小難しいことを言ってるけど、要するに調査戦隊解散に際してシアンさんのご家族さんはじめとした一部のまともな貴族達の抗議があったからこそ、エウリデ王国は冒険者を恐れてるってことを言いたいみたいだ。
一応そういう貴族がいたって話は僕も、前に聞いたことあるよー。いろんな事情から冒険者について詳しかったり、あるいは友好的だったりする家が僕の調査戦隊追放に激しく抗議してくれたってのも。
まあ結果的に追放は普通にされちゃったし、その直後に調査戦隊も解散しちゃったしであんまり影響なかったって思ってたんだけど、どうやら王国貴族内ではそうでもなかったみたい。
「エーデルライト家以外にもレグノヴィア家、ワルンフォルース家など、調査戦隊に一枚噛んでいた貴族達も揃って抗議したからね。さしものユードラ三世もこれには泡を食ったみたいで、ソウマくん追放を主導した大臣に厳重注意処分としたと聞く」
「その上でさらに、調査戦隊がソウマくん追放を受けてエウリデに対してどう動くかで内部分裂。そのまま空中解散となりましたからね……それで冒険者達に対して強気に出られなくなったと当方は認識しておりますが」
「そこもやはり、大貴族まで冒険者サイドに立ったという事実が影響している。陛下は良くも悪くも平凡だからね、地盤から反抗してきたらご機嫌伺いをせざるを得ないのさ」
そう言ってカラカラ笑う教授。王国騎士とかに聞かれてたら下手すると牢屋行きな国王批判だけど、これも実際、巷じゃ割とよく言われてたりするね。
エウリデ連合王国現国王はいつも誰かのご機嫌伺いしかできない風見鶏。なんて、それこそ調査戦隊にいた頃からよく聞いてた話だよー。
いくつもの小国をまとめて連合王国という形にしているこの国の性質上、常にあっちを立てればこっちが立たずって状況が発生している感じではあるんだよねー。
だから難しい舵取りをせざるを得ないらしいけど……歴代連合国王の中でも今の王は相当、バランス取りだけに腐心してるって言われている。
国民に有利な施策を行ったら次は貴族、次は王族、そしてまた国民へと、ローテーションでそれぞれに都合のいい法律を打ち立ててるんだってさ。
そりゃ風見鶏言われちゃうよねー。くすくす嗤って教授はしかして、と続けた。
「もっとも? そんな陛下や大臣、大貴族達をしてなお古代文明の生き残りという者達への欲目は隠せないみたいだが、ね」
「……エーデルライト家は古代文明人の確保には一貫して反対の立場を取っておりますよ」
「あとワルンフォルース家もね。冒険稼業にも手を出している貴族家はさすがに、冒険者の流儀というものを弁えている────と?」
最近になって次々現れている古代文明人の存在には、政治的なあらゆる勢力が等しく目をつけているみたいだ、とまで語ったところでドアの向こう、何やら言い合う声が聞こえてきた。
随分な剣幕で男の人が二人、こっちに向かいながら怒鳴り合ってるみたいだ。
これは……
「お出ましのようだな、浅はかな我が愚兄様が」
来たみたいだね、ガルシアさん。おじさんと喧嘩しながらってのがなんとも不穏だけれど、これで話が進むわけだねー。
靴音がどんどん大きくなっていって、ドアの直前にて一瞬止まる。
そしてそのまま、まるで蹴破るような勢いでドアはぶち開けられた!
となると当のガルシアさん本人から事情を聞く必要があるわけなんだけど……彼は今朝方この家に帰ってきて、今もまだ自室で眠っているらしい。
おじさんがおもむろに立ち上がり、めちゃくちゃ怒った様子で僕らに告げてきた。
「あの馬鹿息子を今すぐ連れてくるから待っていてくれ。大迷宮深層調査戦隊が解散してからというもの、ずいぶん見守ってきたつもりだが今回ばかりは我慢ならん!」
「お、おじさん?」
「ガルシア! ガルシアー! 降りてこいっ、ガルシアっ!!」
怒髪天を衝くってこのことかなあ、怒り心頭って感じで息子さんの名前を叫びながらおじさん、リビングを出て行っちゃった。
おばさんはすっかり憔悴しちゃってて気の毒なくらいだ。レリエさんがそっと近づいて彼女の手を握りしめて慰めているけど、この人ホントに聖人みたいないい人だよー、惚れ直すよー。
で、モニカ教授はというと面白がった感じでシアンさんと話をしているし。
こっちはこっちで相変わらずのマイペースだよー。
「ほう? それではソウマくんには5年前からの縁があると。それではエーデルライト家も余計、エウリデによる彼の追放は荒れたことだろうね」
「そうですね……まず祖父が怒り、次いで父が政府に抗議しました。残念ながら解散を止めることはできませんでしたので、意味のないものでしたが」
「どうかな? 今のエウリデの、冒険者界隈そのものに対しての及び腰はおそらくそちら様のお家やその他、一部有力貴族からの抗議も大きく影響していると見るよ、私は」
スラッとした足を組んでセクシーに語る教授。白衣の下はシャツとジーンズとラフな格好で、スレンダーな体型だからすごく映えるねー。
そしてなんか小難しいことを言ってるけど、要するに調査戦隊解散に際してシアンさんのご家族さんはじめとした一部のまともな貴族達の抗議があったからこそ、エウリデ王国は冒険者を恐れてるってことを言いたいみたいだ。
一応そういう貴族がいたって話は僕も、前に聞いたことあるよー。いろんな事情から冒険者について詳しかったり、あるいは友好的だったりする家が僕の調査戦隊追放に激しく抗議してくれたってのも。
まあ結果的に追放は普通にされちゃったし、その直後に調査戦隊も解散しちゃったしであんまり影響なかったって思ってたんだけど、どうやら王国貴族内ではそうでもなかったみたい。
「エーデルライト家以外にもレグノヴィア家、ワルンフォルース家など、調査戦隊に一枚噛んでいた貴族達も揃って抗議したからね。さしものユードラ三世もこれには泡を食ったみたいで、ソウマくん追放を主導した大臣に厳重注意処分としたと聞く」
「その上でさらに、調査戦隊がソウマくん追放を受けてエウリデに対してどう動くかで内部分裂。そのまま空中解散となりましたからね……それで冒険者達に対して強気に出られなくなったと当方は認識しておりますが」
「そこもやはり、大貴族まで冒険者サイドに立ったという事実が影響している。陛下は良くも悪くも平凡だからね、地盤から反抗してきたらご機嫌伺いをせざるを得ないのさ」
そう言ってカラカラ笑う教授。王国騎士とかに聞かれてたら下手すると牢屋行きな国王批判だけど、これも実際、巷じゃ割とよく言われてたりするね。
エウリデ連合王国現国王はいつも誰かのご機嫌伺いしかできない風見鶏。なんて、それこそ調査戦隊にいた頃からよく聞いてた話だよー。
いくつもの小国をまとめて連合王国という形にしているこの国の性質上、常にあっちを立てればこっちが立たずって状況が発生している感じではあるんだよねー。
だから難しい舵取りをせざるを得ないらしいけど……歴代連合国王の中でも今の王は相当、バランス取りだけに腐心してるって言われている。
国民に有利な施策を行ったら次は貴族、次は王族、そしてまた国民へと、ローテーションでそれぞれに都合のいい法律を打ち立ててるんだってさ。
そりゃ風見鶏言われちゃうよねー。くすくす嗤って教授はしかして、と続けた。
「もっとも? そんな陛下や大臣、大貴族達をしてなお古代文明の生き残りという者達への欲目は隠せないみたいだが、ね」
「……エーデルライト家は古代文明人の確保には一貫して反対の立場を取っておりますよ」
「あとワルンフォルース家もね。冒険稼業にも手を出している貴族家はさすがに、冒険者の流儀というものを弁えている────と?」
最近になって次々現れている古代文明人の存在には、政治的なあらゆる勢力が等しく目をつけているみたいだ、とまで語ったところでドアの向こう、何やら言い合う声が聞こえてきた。
随分な剣幕で男の人が二人、こっちに向かいながら怒鳴り合ってるみたいだ。
これは……
「お出ましのようだな、浅はかな我が愚兄様が」
来たみたいだね、ガルシアさん。おじさんと喧嘩しながらってのがなんとも不穏だけれど、これで話が進むわけだねー。
靴音がどんどん大きくなっていって、ドアの直前にて一瞬止まる。
そしてそのまま、まるで蹴破るような勢いでドアはぶち開けられた!