僕が言えるのは概ねこんなところかなーってことで、模擬戦も終えて僕達は帰ることにした。
ミホコさんとミシェルさんの久しぶりの再会、旧交を温める時間をこれ以上邪魔するのも悪いし、こっちはこっちでギルドに向けて、清掃活動終了の報告をしないといけないからねー。
「杭打ちさん、貴重なお時間をいただき本当にありがとうございました。ザンバーとの付き合い方、見えてきた気がします」
「いえ、こちらこそ……偉そうな物言いばかりしてすみません」
意見を求められていた関係から、割と言いたいことを言う形になっちゃったわけだけど。後から思うと偉そうな物言いが多かったところはちょっと反省だ。
でも言わなきゃいけないことだとは思ったからねー。丸投げしてきたリューゼも、もしかしたら似たようなことはやんわり言ってきたのかもしれないし。
それを僕が比較的、キツめに言ったって感じなのかもしれないね。
頭を掻いて申しわけないと言うと、ミシェルさんは慌てて首を横に振った。
とんでもない! と言ってくれた上で、続けて笑ってくれる。
「杭打ちさんには僅かな時間で、あまりにも多くのことを教えていただきました。心構えのこと、ザンバーの扱い方、そしてリューゼリア様との向き合い方」
「……前2つはともかく、リューゼとの向き合い方、ですか?」
「ええ」
どこか憑き物が落ちたみたいに微笑んでるけど、リューゼとの向き合い方なんて一つも言及した覚えないなー。
ずいぶん過剰に懐いてるって思いはあるけど、それはミシェルさんの個人的嗜好とか趣味とかだろうし好きにすればいいとは思うんだけどねー。たぶんザンバー絡みの僕の物言いから、何かいろいろ思うところがあったんだろう。
青い空を見上げて、彼女はつぶやくように言う。
「……敬愛するあの方のかつての武器を、無理を言って私が継承しました。しかしそれは、あの方のやり方までをも継承するということではなかったのだと気付かされたのです。私には、リューゼリア様のような戦い方は逆立ちしてもできませんから」
「まあ、そうですね。あいつは直感で動くのが最適解ですけど、あなたはむしろ筋道立てた理屈、つまり技術を突き詰めたほうがいいと思いますし」
「何より背丈の問題もあります。こればかりは、神からの授かりものですから、ね」
リューゼとミシェルさんじゃ諸々、前提条件が違いすぎる。
何も考えずに感覚と野生、本能、そして持ち前のフィジカルで戦うのがリューゼリアなのに対して、ミシェルさんは明らかにたゆまぬ努力で身につけた技術、理論、哲学や思考で戦う理論派と言える。
まるきり逆のタイプなんだから真似っ子なんてできるはずがないんだよー。自分のタイプに合わせたスタイルを使う、これは戦う人にとっては基本中の基本だね。
そういう意味で言うと、普段の僕の"杭打ち"スタイルは、ミシェルさんにとっても参考になるもののようだった。さっき見せた僕ならこうザンバーを使うよっていうデモンストレーションを受けて、彼女は素直に思うところを告げた。
「こう言ってはなんですがリューゼリア様の動きを真似するよりも、杭打ちさんの教えていただいた動きがしっくり来るだろうなという感覚はたしかにあるのです。おそらくその……背丈が似通っているからでしょう」
「うぐ……ぼ、僕はこれから伸びますしー? リューゼほどでなくてももうあと30cmは伸びますしー?」
「ソウマちゃん……」
「ソウマくん……」
「なんで優しい目を向けてくるのかなー? やめてー?」
現状ミシェルさんよりも背丈の低い僕はそりゃー参考になる動きを見せられただろうけどさー!
ミホコさんとレリエさんの慈愛に満ちた眼差しがグッサリくるよー、普段なら初恋しちゃうよー! ってはしゃぐとこだけどさすがにそんな気にはなれないや。
うう、絶対に30cmは伸ばしてやるんだ。毎日牛乳飲んで大きくなるんだよー! この町の外、草原を少し進んだところにある牧場のミルクを定期契約で毎日もらってる僕だよー。
「え、ええとー。最終的に決めるのはミシェルさん自身ですから、そこは後悔のない道を選んでもらえたらなーって思いますねー」
「はい、ありがとうございます……どちらにしても後悔する部分はそれぞれあると思いますけど、それでもせめて自分自身の意志で納得のいく選択をしたいとは思います」
「…………そう、ですねー」
後悔はどっちみちするだろうけど、納得できるように自分の意志で選択したい、かー。すごいね、心が強いよー。
そうだね、どんな選択にも絶対に"それを選ばなかったらどうなっていただろうか"ってもしもを考える余地はあるし。それに伴う後悔だって常に、つきまとうものなのかもしれない。
そういう選択と後悔に、納得という信念で向き合えるこの人は素敵な大人なんだなって思う。
かつて3年前、本当に心から納得できる選択ができたのかどうか……未だに迷うところのある僕には、とても眩しい姿だよー。
ミホコさんとミシェルさんの久しぶりの再会、旧交を温める時間をこれ以上邪魔するのも悪いし、こっちはこっちでギルドに向けて、清掃活動終了の報告をしないといけないからねー。
「杭打ちさん、貴重なお時間をいただき本当にありがとうございました。ザンバーとの付き合い方、見えてきた気がします」
「いえ、こちらこそ……偉そうな物言いばかりしてすみません」
意見を求められていた関係から、割と言いたいことを言う形になっちゃったわけだけど。後から思うと偉そうな物言いが多かったところはちょっと反省だ。
でも言わなきゃいけないことだとは思ったからねー。丸投げしてきたリューゼも、もしかしたら似たようなことはやんわり言ってきたのかもしれないし。
それを僕が比較的、キツめに言ったって感じなのかもしれないね。
頭を掻いて申しわけないと言うと、ミシェルさんは慌てて首を横に振った。
とんでもない! と言ってくれた上で、続けて笑ってくれる。
「杭打ちさんには僅かな時間で、あまりにも多くのことを教えていただきました。心構えのこと、ザンバーの扱い方、そしてリューゼリア様との向き合い方」
「……前2つはともかく、リューゼとの向き合い方、ですか?」
「ええ」
どこか憑き物が落ちたみたいに微笑んでるけど、リューゼとの向き合い方なんて一つも言及した覚えないなー。
ずいぶん過剰に懐いてるって思いはあるけど、それはミシェルさんの個人的嗜好とか趣味とかだろうし好きにすればいいとは思うんだけどねー。たぶんザンバー絡みの僕の物言いから、何かいろいろ思うところがあったんだろう。
青い空を見上げて、彼女はつぶやくように言う。
「……敬愛するあの方のかつての武器を、無理を言って私が継承しました。しかしそれは、あの方のやり方までをも継承するということではなかったのだと気付かされたのです。私には、リューゼリア様のような戦い方は逆立ちしてもできませんから」
「まあ、そうですね。あいつは直感で動くのが最適解ですけど、あなたはむしろ筋道立てた理屈、つまり技術を突き詰めたほうがいいと思いますし」
「何より背丈の問題もあります。こればかりは、神からの授かりものですから、ね」
リューゼとミシェルさんじゃ諸々、前提条件が違いすぎる。
何も考えずに感覚と野生、本能、そして持ち前のフィジカルで戦うのがリューゼリアなのに対して、ミシェルさんは明らかにたゆまぬ努力で身につけた技術、理論、哲学や思考で戦う理論派と言える。
まるきり逆のタイプなんだから真似っ子なんてできるはずがないんだよー。自分のタイプに合わせたスタイルを使う、これは戦う人にとっては基本中の基本だね。
そういう意味で言うと、普段の僕の"杭打ち"スタイルは、ミシェルさんにとっても参考になるもののようだった。さっき見せた僕ならこうザンバーを使うよっていうデモンストレーションを受けて、彼女は素直に思うところを告げた。
「こう言ってはなんですがリューゼリア様の動きを真似するよりも、杭打ちさんの教えていただいた動きがしっくり来るだろうなという感覚はたしかにあるのです。おそらくその……背丈が似通っているからでしょう」
「うぐ……ぼ、僕はこれから伸びますしー? リューゼほどでなくてももうあと30cmは伸びますしー?」
「ソウマちゃん……」
「ソウマくん……」
「なんで優しい目を向けてくるのかなー? やめてー?」
現状ミシェルさんよりも背丈の低い僕はそりゃー参考になる動きを見せられただろうけどさー!
ミホコさんとレリエさんの慈愛に満ちた眼差しがグッサリくるよー、普段なら初恋しちゃうよー! ってはしゃぐとこだけどさすがにそんな気にはなれないや。
うう、絶対に30cmは伸ばしてやるんだ。毎日牛乳飲んで大きくなるんだよー! この町の外、草原を少し進んだところにある牧場のミルクを定期契約で毎日もらってる僕だよー。
「え、ええとー。最終的に決めるのはミシェルさん自身ですから、そこは後悔のない道を選んでもらえたらなーって思いますねー」
「はい、ありがとうございます……どちらにしても後悔する部分はそれぞれあると思いますけど、それでもせめて自分自身の意志で納得のいく選択をしたいとは思います」
「…………そう、ですねー」
後悔はどっちみちするだろうけど、納得できるように自分の意志で選択したい、かー。すごいね、心が強いよー。
そうだね、どんな選択にも絶対に"それを選ばなかったらどうなっていただろうか"ってもしもを考える余地はあるし。それに伴う後悔だって常に、つきまとうものなのかもしれない。
そういう選択と後悔に、納得という信念で向き合えるこの人は素敵な大人なんだなって思う。
かつて3年前、本当に心から納得できる選択ができたのかどうか……未だに迷うところのある僕には、とても眩しい姿だよー。