サエちゃんが描いている少女漫画と明らかに毛色が違うことは理解していたけれど、漫画スクールの先生が、莉緒さんは他の子とは違う視点を持っている、独特な美的センスが素晴らしいなど、毎度節操なくベタ褒めしてくれたおかげで自信がつき、私はこれを人目気にせず堂々と描くようになった。
自惚れていた。調子に乗っていた。
先生の言う素晴らしいという言葉をストレートに受け止め、自分は素晴らしいものを描いているのだと。
だから、
『ごめん、莉緒ちゃんの作品見てたら、ちょっとついていけないかなって思い始めて』
サエちゃんがそんな言葉を添えてスクールをやめると言ってきたとき、殴られたような衝撃を受けたのだ。
『私は、莉緒ちゃんと一緒に少女漫画を描きたくてスクールに入ったから、途中から裏切られたみたいでショックだったんだよね』
『他の子とも話してたんだけど、化け物との恋愛?みたいな作品描くって、莉緒ちゃん、ちょっとおかしいと思う』
『なんていうか、普通じゃないよ。普通じゃないの描けば、先生に褒められるから描いてるんだろうけど……はっきり言って気持ち悪い』