「設営のときの興奮するって言葉は嘘だけど、檻先生の漫画のワンシーンを見せられたとき、本当にちょっとやばかったんだよね。胸の奥がざわって動いて、まじで怪異に魅入られたのかなって思うくらい、自分の心臓の音、久々に聞いた気がして」


矢島くんの手がわたしの手を掴んだ。
そして、自分の胸元へと誘導する。


手のひらに、たしかな振動が伝わる。



「俺、ちゃんと生きてるんだなって実感できた。ありがとう、檻先生」



私に向けられた彼の声は、瞳は、春風のようにあたたかかった。




檻の島【完】