「檻先生は、別に俺に興味ないでしょ。そういうのわかるんだよね。でも、作品の男が俺に似てるって言われたとき、檻先生は否定しなかった」
「……うん、そうだね。矢島くんをモデルにしたわけじゃないよ。でも、私の中の、その……怪……」
「怪異?」
「っ、そう、怪異に魅入られるイメージに、矢島くんがどうしてもぴったり当てはまってしまうというか、無意識に、体の線の細さとか顔の綺麗な輪郭とか、こういう感じだなあって当てはめてたフシは……ある」
「そっか、俺は檻先生の中で、怪異に魅入られてぐちゃぐちゃにされてるんだ」
「ごめんっ、気持ち悪いよね!」
「ううん、ちょっと興奮する。俺のこと、もっとぐちゃぐちゃにして」
矢島くんはくすっと笑った。
すぐに嘘だとわかる。矢島くんのリアクションは矢島くんのなかでプログラミング処理されたものだと本人に教えてもらったばかりだから。
だけど本人は、私の脳内を見透かしたように「本当だよ」と囁いた。熱のない声、ではなかった。