この世に、恵まれぬ子はいる。

水雫(みしず)がそうだった。
小さい頃から他人とは違う自分に悩み、悩み抜いた末、それを打ち明けた肉親にまで拒絶される。
どれほどの苦痛だろう。

とてもじゃないが、他人には想像できない。

夜空(よぞら)もまた恵まれぬ子だった。
だが、あの子の場合、一番つらかったのは周りだろう。
あんなにも明るかった夜空が、いつもその笑顔で周りを照らしていた夜空が、突然その身に降り掛かってきた無慈悲な災厄により塞ぎ込んでしまうなんて、誰が思うだろう。

恐らく、誰も思わない。

思おうとしない、最悪の可能性を考えない。
最悪ばかり考えていたら、前を向けないから。

そんな恵まれぬあの子達が、出逢い、お互いがお互いを助け合えるのであればどんなに良いだろう。

そう思ったから、  はあの子達を同じ運命に乗せた。

  がいなくなっても、いずれ、長い時をかけたとしても、出逢えるよう。

どれくらい待てばいいのだろうか。
今日、明日、それとも来年??

永遠のようで一瞬のような時間を旅して、あの子達は出逢った。

一瞬の邂逅。
それでも、その出逢いはもうあの子達は大丈夫だと  に思わせるような何かがあった。

  の魂は消えた。

元々、あの子達を同じ運命に乗せた時点で  は力を使い果たしていたのだ。

それを、  の上位互換に当たる  の上司が、あの子達が出逢うときまで魂を保たしていてくれたのだ。
まるで我が子のようになっていた、あの子達の行く末を見守れるよう。

本当に感謝しなくては。
そう思うと、不思議と笑みが湧いてくる。
あぁ、私は今、幸せなんだ。
そう、噛み締める。

だが、それももう終わった。
あの子達は、これから、助け合って生きていけるだろう。

良かった、本当に良かった。

  の生前の行いは良かったとは言い難かった。
それが、なんの間違えか、  なんかが  になってしまうなんて、この世界は狂っている。

過去のことを思い出し、苦笑する。

最期に、誰かの助けになれた。
それ以上の喜びが、至福があるだろうか。

どうか、あの子達が、これから幸せに生きていけるよう。
お互いが、お互いを助け合えるよう。
一筋などと言わず、大粒の、目も開けられないほどたくさんの光があの子達の生命(いのち)に差し込むよう。

精一杯、祈ろう。

夜空と水雫に、神のお導きがあらんことを。