時間も来たので夕食を作っていく。まずは沼霧さんがほたての下処理をしていく。
 私もほたての殻から身を剥いて手伝う。この時期は水が冷たくてあっという間に動きが硬くなる。

 下処理が終わるとほたてを綺麗に洗い、ざるに置いて次に野菜をざくざくと切る。
 野菜も洗い、フライパンに油を敷いて、野菜…玉ねぎ→キャベツの順で炒めていく。

「どうなるかな」
「楽しみですねえ」

 じゅっじゅっと野菜が焼ける音と匂いが台所に広がっていく。野菜に火が通りしんなりして、玉ねぎが茶色くなった所でほたてを入れる。
 私が菜箸で炒めているのだが、これは美味しそうというかついつまみ食いしたくなりそうだ。

「いい感じね」

 母親も楽しみにしているようだ。沼霧さんは私の傍で味噌汁を作っている。
 最後に塩と醤油少しをかけ味を整えたら、炒め物はこれで完成となる。

「出来た!」

 味噌汁も完成し、麦交じりのご飯を茶碗によそって、味噌汁は御椀に、炒め物は大皿に盛り食卓に置く。
 最後にお箸も用意すると、これで今日の夕食の準備が終わった。食卓には既に小さな海坊主と、小魚みたいなあやかしが待機している。

「頂きます」

 全員揃って挨拶をしてから、まずは沼霧さんが作った味噌汁を頂く。
 玉ねぎの甘さとコクが味噌汁へ染み出ていて、とても美味しい。

「温まる……」

 私が思わずそう言ってしまうくらいの、温かさだ。
 次にほたてと野菜の炒め物を頂く。ほたては身がぷりぷりしていて肉厚で食べごたえがある。野菜も美味しい。

「美味しいわね。味付けも丁度良いわ」

 母親も喜んで炒め物をちょいちょいとつまんでいく。薄めの味付けにしたのがどうやら功を奏したかもしれない。

「ほたてはめまい等に効果があるようですよ」

 と、あやかし達にもご飯を与えながら語る沼霧さんに、母親が食いつく。

「あら、そうなの?」
「薬膳の辞典に書いてありました」
「なるほど…」

 母親は極稀だがめまいを起こす事がある。まあ、年齢的なものもあるのでしょうという医師の見立てだ。

「△□☓#!」

 あやかしも、美味しそうに目を細めながら炒め物やご飯に味噌汁を食べている。彼らの表情を見るとなんだか癒やされる。

「ごちそうさまでした」
  
 今日の夕食も、美味しく頂いた。