あれから弟達への話も終わり、食堂で久しぶりに一家揃っての夕食を食べ終わった私は、一息ついた後お風呂に入浴していた。

「はあ……」

 ここのお風呂場は、別荘のお風呂場よりも広い。こうして独り占めしているとなんだか贅沢な気分になる。

「そろそろ出ようかな」

 入浴を済ませ、身体を拭いて着替えて自室へ戻る途中。和一と廊下で遭遇した。

「姉さん」
「和一、これからお風呂?」
「うん。もう少しゆっくりしていくつもりだったけど」
「そっか、じゃあつかっておいで」

 私はじゃあ、と和一に手を振って部屋に戻ったのだった。
 部屋で小説を読んでいると、いつの間にか夜の22時を迎えていた。

「そろそろ寝ようか」

 と、就寝の準備をしていると、部屋の扉を叩く音がした。

「はい」
「千恵子?」

 母親だった。どうやら、私の様子を見に来たらしい。

「体調は?」
「何も無い。大丈夫」
「そう、なら良かった。早く寝なさい」
「うん」

 母親はそう告げると、ゆっくりと去っていった。

「寝よ」

 照明を暗くして、ベッドに入る。やはり別荘の布団よりもベッドの方が柔らかい。

「……」

 しばらくして、私はある事に気がついた。そう、空腹感だ。

(お腹すいた)

 何故か私は今、空腹感に襲われている。お腹が減っているのだ。胃の中が空っぽで、早く何かを食べたいという欲が胃袋の底から湧いて出てくる。

(夕食そんなに食べてないからかな)

 私は我慢出来ずにベッドから起きて、静かに早歩きで食堂に向かった。

「あ」

 すると、私は和一が食堂の台所で何か作っている場面に出くわす。

「和一?」
「お腹減ってさ……もしかして姉さんも?」

 はっきりと言い当てられたので、私はうん。と頷く。

「雑炊作ってるんだけど、姉さんも食べる?」
「何の雑炊?」
「ねぎ」
「じゃあ、食べる」

 食堂の椅子に座っていると、良二も食堂にやって来た。

「兄さん、お腹空いたんだけど何かない?」
「あ、雑炊いる?」
「いる」

 少し経って、和一が作っていた雑炊が完成した。木のお椀に盛って、息を吐いて冷ましてから食べる。

「頂きます」

 一口分口に入れてみる。するとしょうゆとだしとネギに麦ごはんのそれぞれの味が、一気に口の中に広がっていく。

「美味しい!」
「姉さんほんと? 雑に作ったから味は自信無かったんだけど……」
「いやでも美味しいよ」
「兄さんうまいわ、これ」

 自作の雑炊が美味しいと褒められた和一は、嬉しそうにはにかみながら、雑炊を食べていった。

「ごちそうさまでした」