お昼ごはんが決まった。焼きおにぎりと、カキの煮つけの二品。 
 だが、お昼まではかなり時間がある。

「別荘に戻って、ゆっくり過ごそうかな」

 私は別荘の自室に戻り、本を読みながら時間を潰す。最近読むだけでは飽き足らなくなってきたので、自分でも小説を書くようになった。
 そんな中で文字と向き合っていると、家の玄関の方から声が聞えてくる。郵便だ。

「はーーい」

 母親が家から出て対応してくれているようだ。私は部屋の中で大海原を見つめながら、郵便局員が過ぎ去るのを待って階段を降りた。

「誰から?」
「お父さんから」

 いつも父から来る、安否確認の手紙だった。また返信を書いて送らないといけない。

「あっちはかなり配給がきつくなってきたみたいね……」
「そうなんだ……。お米とかも配給なんだっけ」
「そうよ、こっちはお父さんが色々頑張ってるからどうにかなってるけど」

 私達は一般庶民では無い。だから財閥のトップである父親が、お米などと言った食料を定期的に仕送りとして送ってきてくれている。それには感謝するしかない。

「後で、返信書かないとね」
「そうだね」

 お昼ごはんを用意する時間がやってきた。戻ってきた沼霧さんと母親と一緒に、3人で台所に立つ。これはいつも通りの慣れた光景だ。

「カキは貧血に良いですからね、積極的に取った方が良いでしょう」

 特に母親は貧血に長年悩まされて来たので、こう言った貧血に良い食材は沼霧さんの言う通り、積極的に取っていきたい所だ。

 カキを殻から向いて、塩を使って綺麗に揉み洗いして汚れを取る。水ですすいでから、鍋に入れて醤油と砂糖とみりん、そして細かく刻んだ生姜を加えてコトコトと煮ていく。
 生姜を食べると体がぽかぽかと温まるので、寒いときはよく食べる食材だ。
 お櫃に入ったごはんは、おにぎりにしてから上から味噌を塗って焼いていく。

「ヨシさんのおにぎりいつも形が綺麗ですね」
「沼霧さんそう?」
「そうですよ、いつも綺麗な三角だなって」
「あ、カキの煮つけはそろそろ良さそうね」
「じゃあ、火を消しましょうか」
「沼霧さんお願い」

 こうしてお昼ごはんが完成した。丸い食卓にお昼ごはんの乗ったお皿やおはしを置いて、いただきます。と挨拶をする。