「よし、2人とも網を引き揚げていくから手伝って!」

 魚道さんの声かけにより、これから魚網の引き揚げが始まる。光さん達も漁船の近くに戻ってきてくれた。

「よいしょっと……」

 最初のえさははずれ。えさだけ半分ほど残して食べられていた。

「魚道。ちょいちょい食い逃げした奴いるわ。すまんな」
「大丈夫だよ光さん。向こうも賢いからね。変なのはかかってない?」
「ああ、あやかしの類はかかってないから安心しな。かかってるのは全部魚だ」
「了解!」

 光さんからの報告を受けて、私と沼霧さん、魚道さんは網を引き揚げていく。2つ目の餌には中くらいの魚がかかっていた。これはサバだろうか。

「魚道さん、これサバ?」
「そうだね。サバだよ」

 この後もサバが釣れていった……のだが、ほぼサバである。たまにブリも釣れたが、どう見てもサバばかりなのは否めない。

「これだけサバがかかったら、どうしましょうかねえ」

 と複雑な笑みで沼霧さんが呟いた。

「どうしよ、サバの味噌煮しか思いつかない」
「私も煮て焼くくらいしか思いつかないですね……」

 すると、網の重さが途端に増した。重さが増した上に海の底へと引きずり込まれるような感覚を覚える。

「っ!!」
「これは大物だ!! 千恵子さんは網から手を離して下がってて。危ないからね」
「分かった……」
「光さん!何が釣れてる?!」

 魚道さんが大きな声で、光さんにそう問いかける。

「ああ、こりゃサメだな。ホオジロザメじゃねえか?」
「え“」
「結構大物だぞ。これ」

 ホオジロザメ……って食べられるのだろうか?魚道さんも困惑しながら、最終的にはけん引器具も使って何とかホオジロザメを吊り上げる事に成功したのだった。

「どうやって……食べたらいいのこれ」
「私もサメは……そこまで調理した事無いので分からないですね……でもひれは美味しくいただけるなんて話は聞いた事がありますが」
「おーーい、いらねえならそれ俺らが貰おうか? つっても内臓しか食わねえけど」
 
 結局、ホオジロザメは今回の釣りの報酬も兼ねて光さん達にあげる事となった。
 成果はサバを中心とした青魚が主。あとはなんでかよく分からないがたこが釣れた。

「ああ、このたこは水中を泳いでたのを甥っ子が釣り針に引っ掛けたんだ」

 光さん曰く、こういう事らしい。

「大漁だね、ではこちら今回のお礼の品って事で」

 私と沼霧さんは海で昼食を食べた後、魚道さんからお礼の品……たことサバ、ブリを貰い、家に帰ったのだった。