「そんじゃ、そろそろ行くか」
「そうだね。じゃあ皆コノ達は行くね」
しばらく彼らと話していて、そろそろ戻る流れになりホノカがそれを口にして、コノも同調した。
「コノハお姉ちゃん達頑張れよ!」
「応援してます!」
男の子二人から無邪気な声援を受けた二人は似たようにはにかんだ。
「お兄さんも頑張ってね」
「うん、ありがとう」
「それと何か進展あったら教えて」
「……了解です」
この子は最初からぶれないな。苦笑しつつも、その芯の強さはずっと持っていて欲しいなと思う。
「「「ばいばーい」」」
僕達は彼らに手を振って東側を後にして、村長の家の帰り道に乗った。
「随分彼女に懐かれていたな」
「何でだろうね。最初からあんな感じだった気がする」
「まさか改たなライバルが……?」
コノは小声で危機感を呟くが、多分そんな感じじゃないと思う。ヒューマンドラマを観察したいのだろう。
「それよりもこの後はどうしようか?」
「やる事も終わったし、明日も早いし今日はもう家で過ごそうぜ」
「さんせーい」
ということで僕達は寄り道はせず家に戻った。
*
夕食までは家で一人で読書をしたり、二人に誘われて軽く雑談したりちょっとした遊びをしたりと、まったりとした時間を過ごした。空が藍色になる頃に僕達はオボロさんに呼ばれて大部屋で食卓を囲んだ。
「今日はホノカが好きなエルフ鍋だ」
「おおっ! サンキューじいちゃん」
「しっかり味わうのだぞ」
机の真ん中に大きな鍋があり、それぞれに掬って入れるお椀が置かれている。中身は緑色のスープで満たされていて、そこに具であるカラフルな野菜と肉が入っていた。
「うわぁ美味しそう……」
「それじゃあ手を合わせて」
「「「「いただきます」」」」
いつも通り自然の恵みに長く感謝をしてから、全員同時に鍋の中ををつついた。
「これは……」
入っている色々な具材をまとめて取って、そのまま口に入れると、濃厚なスープにスッキリとした味わいでシャキシャキした野菜達と甘みのある肉が混ざり合って、それぞれの味の悪い部分打ち消し合い、最初から最後まで美味のまま飲み込めた。そしてその温かさが身体に優しく流れてホッとする。これは長く食べても飽きがこなさそうだ。
「やっぱり最高です、エルフ鍋。ユウワさんは……って顔を見ればわかりますね」
「相変わらずおぬしは黙々と美味しそうに食べるな。作り手として嬉しい限りだ」
二人から見守られるようにまじまじと顔を見られ食べづらくなる。そんなむず痒くて和やかな雰囲気の中、肝心のホノカはぱっとしない表情でいて。
「ホノカ、もしかして口に合わなかったか?」
「いや合わないんじゃないんだけどさ……」
ホノカは頬をかきながら、気まずそうに思案した後に意を決してたのか、一度呼吸を整えると口を動かした。
「実は、亡霊になってから味覚が薄くてさ。最近になってそれがひどくなってんだよ。それに、腹も減らなくなっててるし。まぁ、食わないと魔力が回復しないから胃に入れないといけないんだけどな」
彼女はできるだけ軽い雰囲気を出そうとする口調ではあったけど、声には微細な震えがあって。
「……もう慣れてるからそんな深刻そうにしないでくれ」
「そうだったんだ。ホノカ……ごめんね気づいてあげられなくて」
「こ、コノハ……」
コノはホノカを柔らかく抱きしめた。それをされて、驚きに目を大きくしてから噛みしめるようにゆっくり瞼を閉じる。
「ありがとなコノハ。オレは大丈夫」
「ほ、本当に? 無理はしてない?」
数秒してからコノの胸から離れたホノカは雪解け水のような微笑をたたえていた。
「ああ。味覚は少しはあるし、料理に込められた想いは感じられるからな。じいちゃんありがとな、すげぇ温かかったよ」
「……そうか。良かったよ、ホノカ」
オボロさんの瞳はホノカの笑顔によってうるうるしている。
「ユウワも、そんな顔すんなよ。オレは気を遣われるのが一番嫌なんだ。それに、幸せそうにしてる奴を見るとこっちも幸せになるし美味しく感じられるんだ」
「うん……わかった。全力で味わうよ」
「ははっ、そこまでじゃなくていいけど。頼むげ」
彼女の思いを汲んで僕達はさっきと変わらず、とまではいかなかったけれど、頬が緩むような空気感で食事を続ける。ホノカとの最後の夕食を後悔しないように。
「そうだね。じゃあ皆コノ達は行くね」
しばらく彼らと話していて、そろそろ戻る流れになりホノカがそれを口にして、コノも同調した。
「コノハお姉ちゃん達頑張れよ!」
「応援してます!」
男の子二人から無邪気な声援を受けた二人は似たようにはにかんだ。
「お兄さんも頑張ってね」
「うん、ありがとう」
「それと何か進展あったら教えて」
「……了解です」
この子は最初からぶれないな。苦笑しつつも、その芯の強さはずっと持っていて欲しいなと思う。
「「「ばいばーい」」」
僕達は彼らに手を振って東側を後にして、村長の家の帰り道に乗った。
「随分彼女に懐かれていたな」
「何でだろうね。最初からあんな感じだった気がする」
「まさか改たなライバルが……?」
コノは小声で危機感を呟くが、多分そんな感じじゃないと思う。ヒューマンドラマを観察したいのだろう。
「それよりもこの後はどうしようか?」
「やる事も終わったし、明日も早いし今日はもう家で過ごそうぜ」
「さんせーい」
ということで僕達は寄り道はせず家に戻った。
*
夕食までは家で一人で読書をしたり、二人に誘われて軽く雑談したりちょっとした遊びをしたりと、まったりとした時間を過ごした。空が藍色になる頃に僕達はオボロさんに呼ばれて大部屋で食卓を囲んだ。
「今日はホノカが好きなエルフ鍋だ」
「おおっ! サンキューじいちゃん」
「しっかり味わうのだぞ」
机の真ん中に大きな鍋があり、それぞれに掬って入れるお椀が置かれている。中身は緑色のスープで満たされていて、そこに具であるカラフルな野菜と肉が入っていた。
「うわぁ美味しそう……」
「それじゃあ手を合わせて」
「「「「いただきます」」」」
いつも通り自然の恵みに長く感謝をしてから、全員同時に鍋の中ををつついた。
「これは……」
入っている色々な具材をまとめて取って、そのまま口に入れると、濃厚なスープにスッキリとした味わいでシャキシャキした野菜達と甘みのある肉が混ざり合って、それぞれの味の悪い部分打ち消し合い、最初から最後まで美味のまま飲み込めた。そしてその温かさが身体に優しく流れてホッとする。これは長く食べても飽きがこなさそうだ。
「やっぱり最高です、エルフ鍋。ユウワさんは……って顔を見ればわかりますね」
「相変わらずおぬしは黙々と美味しそうに食べるな。作り手として嬉しい限りだ」
二人から見守られるようにまじまじと顔を見られ食べづらくなる。そんなむず痒くて和やかな雰囲気の中、肝心のホノカはぱっとしない表情でいて。
「ホノカ、もしかして口に合わなかったか?」
「いや合わないんじゃないんだけどさ……」
ホノカは頬をかきながら、気まずそうに思案した後に意を決してたのか、一度呼吸を整えると口を動かした。
「実は、亡霊になってから味覚が薄くてさ。最近になってそれがひどくなってんだよ。それに、腹も減らなくなっててるし。まぁ、食わないと魔力が回復しないから胃に入れないといけないんだけどな」
彼女はできるだけ軽い雰囲気を出そうとする口調ではあったけど、声には微細な震えがあって。
「……もう慣れてるからそんな深刻そうにしないでくれ」
「そうだったんだ。ホノカ……ごめんね気づいてあげられなくて」
「こ、コノハ……」
コノはホノカを柔らかく抱きしめた。それをされて、驚きに目を大きくしてから噛みしめるようにゆっくり瞼を閉じる。
「ありがとなコノハ。オレは大丈夫」
「ほ、本当に? 無理はしてない?」
数秒してからコノの胸から離れたホノカは雪解け水のような微笑をたたえていた。
「ああ。味覚は少しはあるし、料理に込められた想いは感じられるからな。じいちゃんありがとな、すげぇ温かかったよ」
「……そうか。良かったよ、ホノカ」
オボロさんの瞳はホノカの笑顔によってうるうるしている。
「ユウワも、そんな顔すんなよ。オレは気を遣われるのが一番嫌なんだ。それに、幸せそうにしてる奴を見るとこっちも幸せになるし美味しく感じられるんだ」
「うん……わかった。全力で味わうよ」
「ははっ、そこまでじゃなくていいけど。頼むげ」
彼女の思いを汲んで僕達はさっきと変わらず、とまではいかなかったけれど、頬が緩むような空気感で食事を続ける。ホノカとの最後の夕食を後悔しないように。