僕達は桃奈さんが落ち着いた後に村に戻った。すぐに『マリア』に戻る事はせず、少しゆっくりしてから帰ることに。
まずは、林原さんが作ってくれた朝食を皆で食べた。採れたての野菜や果物が中心で、美味しくて朝でも胃の中に沢山入れられた。
それからリュックに荷物類を詰めて帰り支度を済ませてから、仮眠を取るためにベッドに寝転んだ。
「……」
しかしさっきのことで頭が冴えてしまって、意識の底に沈むことができなく、浅い所でプカプカと浮くことしかできなかった。
「無理だ……」
眠れそうになくて僕は諦めて、毛布から出てベッドに座り直した。まだ時間があって、暇を持て余して木刀を軽く振り回す。
「ちょっと入るわよ」
「桃奈さん?」
二回ノックした後に桃奈さんが部屋に入ってくると、鍵を閉めて迷いなく僕の隣に座ってくる。真剣な表情でいるし、至近距離に彼女がいて二周囲の緊張してしまう。
「あたし、決めたことがあるのよ」
僕を強い眼差しで見据えて、おもむろに桃奈さんは話し出した。
「今からあんたを好きになる」
「……へ?」
一瞬言葉だけ認識して意味が理解できず思考が止まった。そして彼女のその声が脳内に反響して、次第に飲み込めてきて。
「すすす……好き!?」
「反応遅すぎでしょ」
聞き間違いか何かと思ったけど、やはりそうじゃないようで。そうなると今度は好きの種類について考えてしまって、顔が熱くなってくる。
「顔真っ赤よ」
「うっ。そ、そんなことよりも、好きって……どういう」
「ミズちゃんやソラくんみたくあんたのことも好きになるってことよ」
桃奈さんも段々と頬が赤くなっていた。これは告白なのだろうか。彼女の好きの種類も良くわからないし、それに一番気になることはどういう心の変化があったかで。
「でも、桃奈さん。今まで好きにならないって」
「本当はそのつもりだった。けれど、あんたの無茶な行動を見て気が変わったわ」
「気が変わった?」
それは、それで好きになったとか惚れたとかそういうニュアンスではなかった。
「……ちょっと長話になるけど聞いてくれる? あんたに話しておきたい」
「は、はい」
そう言う彼女は浮ついた話をするという雰囲気ではなかった。だから、僕も心を落ち着かせて居直る。
「あたしは昔から人を好きになりやすかったわ。ちょっと優しくされたり、趣味が同じだったり、好意を表明されたりするとコロッとなっちゃう。だから実は、出会った頃にあんたに可愛いって言われて、好きになってた」
「あの、一応服のデザインに言ったつもりなんですけど」
「あれはあたしが描かれてるんだから同じよ」
納得はいかないけど、話が進まないのでとりあえず頷いておいた。
「それでね、あたしは好きになりやすい上に、相手に依存しがちで、色んな子から重いとか言われがちだったわ」
「あー」
その説明で、桃奈さんのアオや林原さんへの好きを全開にしている感じとか、僕への嫉妬の視線や服装の感じとかがしっくりきた。
「そのせいでどんどん人が離れていっちゃったわ。友達も恋人も。そしてまた新しい関係を作る、それを繰り返してた」
寂しげに目を瞑った。
「その頃は、何で人が離れるのかあたしが何をしてしまっているのか冷静に考えられていなかったの。ただ、好きなだけなのにって。本当はそれが負担になって苦しませているのにね」
自嘲気味に微笑んだ。そこには後悔を耐えるための防衛が見て取れて。僕も喉の奥を掴まれたような感覚に陥った。
「それに気付かされたのはこの世界に来る前の一年前。その時は一人暮らしをしていたんだけど、友人はゼロで彼氏一人があたしの依存先だった」
年上だからか何となくもっと前からいたんだと思っていたけど、アオの方が先にいたみたいだ。
「でも案の定、彼にも重いって言われて愛想尽かされちゃった。別れたくなくて彼と話したけれど、そこであたしの好きが人を苦しめてるってはっきり突きつけられたわ」
「……」
今日二度目だった。アオに対する僕の愚行を思い出してしまうのは。
「振られて独りになって、でもあたしが関わると人を苦しめちゃうから関係を築けなくて。それでどう生きていいかわからなくなって。……それであたしは自殺した」
「……っ」
僕とアオと同じだったんだ。彼女の言う生きる理由を見失った喪失感、それは僕もつい最近まで持っていたもので、痛く理解できた。
「それでこっちの世界に呼ばれて、ミズちゃんやソラくんと関わるようになったわ。最初は何とか気持ちを抑えていたのだけど、二人があたしの話を聞いてくれてね、受け止めてくれるって言ってくれたのよ。それで、今も二人の優しさに甘えているわ」
何だか二人らしいなと思った。ただ、林原さんの対応は割とドライで、それは良いのだろうか。
「それで、話を戻すのだけど。気が変わったのは、あんたを好きになることがあんたの無茶を止められると思ったからなのよ」
「……好きになることがですか?」
「ええ。あんたはミズちゃんがいながら自分の命なんてどうでもいいって感じだった。だったら、さらに悲しむ人が増えたら躊躇すると思ってね」
桃奈さんは自身の瞳を指で示した。まだ少し涙によって目元が腫れていて。彼女が悲しむ姿が容易に想像できてしまった。
「あたしは今まで自分のために人を好きになっていた。でも、今度はあんたのために好きになろうって決めたわ! 長くなっちゃったけどそれを伝えに来たの」
拒否権はないといった感じだ。話し終えると、彼女は一度伸びをしてベッドからぴょんと立ち上がった。
「ということだから、これからよろしく」
「わ、わかりましたけど……場合によって無茶は、すると思います……」
「なら、絶対できないくらい好きを伝えるから覚悟してね、ユーぽん!」
「ユーぽん!?」
最後に聞き捨てならない呼び名が耳に入ってきて、思わず聞き返した。
「可愛いでしょ? ユーぽんも可愛いの好きだし、ぴったりよ」
「いやいやいや! 他の二人とも毛色が違いますし、他にないんですか?」
何だかバカップルのあだ名みたいで恥ずかしいし、何か響きがクーポンみたいだし。まぁ可愛いは可愛いけど、僕には合わない。
「これしかないわ。異論は認めないから」
「ええ……」
「そうそう、あたしのことはモモ先輩って呼んで欲しいわ。あたしの方が先に来てるわけだしね」
僕の意見が通らず、彼女の意見ばかり押しつけられるのは、若干不満だったが言い合いをする気は起きないので、口に溜まっていた反論を消化した。それに、ユーぽんみたいな変なあだ名じゃないし。
「わかりました……モモ先輩」
「うぇへへ、先輩……先輩」
心の中でため息をついて彼女をそう呼ぶと、ずっとそう呼んで欲しかったのか凄く幸せそうで、その顔を見ると毒気が抜かれてしまった。
「おーい二人共〜そろそろ出るよ〜」
ドアの向こうからアオの呼びかける声がした。
「はーい! さぁマリアに帰るわよユーぽん」
「は、はい」
色々と思う事はあるけれど、モモ先輩との距離が縮まった気がして嬉しかった。もうあの敵意を向けられなくなると思うと、心が楽になる。
僕はリュックを背負い木刀を手に持って、モモ先輩と一緒に部屋を出た。そして、皆準備を終えるとクママさんの家を後に。
「皆さんありがとうございました。この恩は一生忘れません。また遊びに来てくださいね」
クママさんと別れの挨拶をしてから、僕達は村から出て森の中へ。
「ユーぽん、今回は大活躍だったわね」
モモ先輩は僕とアオの間にいて、身体が触れ合う距離を保って歩いていた。
「ユーぽんって、二人すっごく仲良くなったんだね〜」
「そうなのよ! ねぇ、あたしの事呼んでみて」
「……モモ先輩」
「うぇへへ。後輩ができちゃったわ」
何だろうめちゃくちゃむず痒い。今すぐ駆け出して風を浴びたくなる。冷ややかな感じが欲しくて、後ろを歩く林原さんに助けを求めて振り返った。
「……くっ」
「林原さん?」
彼は心臓部分を痛そうに手で抑えていて、顔を真っ青にして立ち止まっていた。
「どうしたんですか?」
「悪い、先に行ってくれ!」
「林原さん!?」
突然走り出して、帰り道とは関係のない方向に行ってしまって。反射的に僕は追いかけた。
「ま、待ってください」
「ユウ、行っちゃ駄目!」
「ユーぽん、戻ってきて!」
彼女達から少し離れた所でそう呼び止められて。その緊迫感に思わず足を止めると、上空から羽ばたくような音が聞えた。
「へ?」
「ピャーッ!」
「うわっ!」
上を見るとそこにはグリフォドールがいて。そいつはものすごい速度で迫ってきて、その瞬間僕の身体はそいつの後ろ足に掴まれた。その圧迫と衝撃で木刀を落としてしまう。
「飛んで……」
そして、そのまま空に連れ去られて、いつの間にか上にあったはずの木々が下にあった。
「ユウ!」
下にいるアオがオレンジの斬撃を飛ばしてくる。グリフォドールは避けるもその反動でグワングワン身体が揺さぶられた。
「ちょ、当たるって!」
「あっごめん!」
「でも、何もしないとユーぽんが」
下にいる二人はもどかしそうに僕を見上げる。
攻撃が止まるとグリフォドールは悠々と大きく羽を動かして前進。二人が遠くなって、どんどん島の外へと行ってしまう。
「嘘でしょ……」
「ピャーッ」
そうして少しの間も置かずに、僕の眼科には青空と雲だけが広がっていて。
「嘘でしょぉぉぉぉぉ!」
僕の叫びは誰にも届かない場所に吸い込まれた。
まずは、林原さんが作ってくれた朝食を皆で食べた。採れたての野菜や果物が中心で、美味しくて朝でも胃の中に沢山入れられた。
それからリュックに荷物類を詰めて帰り支度を済ませてから、仮眠を取るためにベッドに寝転んだ。
「……」
しかしさっきのことで頭が冴えてしまって、意識の底に沈むことができなく、浅い所でプカプカと浮くことしかできなかった。
「無理だ……」
眠れそうになくて僕は諦めて、毛布から出てベッドに座り直した。まだ時間があって、暇を持て余して木刀を軽く振り回す。
「ちょっと入るわよ」
「桃奈さん?」
二回ノックした後に桃奈さんが部屋に入ってくると、鍵を閉めて迷いなく僕の隣に座ってくる。真剣な表情でいるし、至近距離に彼女がいて二周囲の緊張してしまう。
「あたし、決めたことがあるのよ」
僕を強い眼差しで見据えて、おもむろに桃奈さんは話し出した。
「今からあんたを好きになる」
「……へ?」
一瞬言葉だけ認識して意味が理解できず思考が止まった。そして彼女のその声が脳内に反響して、次第に飲み込めてきて。
「すすす……好き!?」
「反応遅すぎでしょ」
聞き間違いか何かと思ったけど、やはりそうじゃないようで。そうなると今度は好きの種類について考えてしまって、顔が熱くなってくる。
「顔真っ赤よ」
「うっ。そ、そんなことよりも、好きって……どういう」
「ミズちゃんやソラくんみたくあんたのことも好きになるってことよ」
桃奈さんも段々と頬が赤くなっていた。これは告白なのだろうか。彼女の好きの種類も良くわからないし、それに一番気になることはどういう心の変化があったかで。
「でも、桃奈さん。今まで好きにならないって」
「本当はそのつもりだった。けれど、あんたの無茶な行動を見て気が変わったわ」
「気が変わった?」
それは、それで好きになったとか惚れたとかそういうニュアンスではなかった。
「……ちょっと長話になるけど聞いてくれる? あんたに話しておきたい」
「は、はい」
そう言う彼女は浮ついた話をするという雰囲気ではなかった。だから、僕も心を落ち着かせて居直る。
「あたしは昔から人を好きになりやすかったわ。ちょっと優しくされたり、趣味が同じだったり、好意を表明されたりするとコロッとなっちゃう。だから実は、出会った頃にあんたに可愛いって言われて、好きになってた」
「あの、一応服のデザインに言ったつもりなんですけど」
「あれはあたしが描かれてるんだから同じよ」
納得はいかないけど、話が進まないのでとりあえず頷いておいた。
「それでね、あたしは好きになりやすい上に、相手に依存しがちで、色んな子から重いとか言われがちだったわ」
「あー」
その説明で、桃奈さんのアオや林原さんへの好きを全開にしている感じとか、僕への嫉妬の視線や服装の感じとかがしっくりきた。
「そのせいでどんどん人が離れていっちゃったわ。友達も恋人も。そしてまた新しい関係を作る、それを繰り返してた」
寂しげに目を瞑った。
「その頃は、何で人が離れるのかあたしが何をしてしまっているのか冷静に考えられていなかったの。ただ、好きなだけなのにって。本当はそれが負担になって苦しませているのにね」
自嘲気味に微笑んだ。そこには後悔を耐えるための防衛が見て取れて。僕も喉の奥を掴まれたような感覚に陥った。
「それに気付かされたのはこの世界に来る前の一年前。その時は一人暮らしをしていたんだけど、友人はゼロで彼氏一人があたしの依存先だった」
年上だからか何となくもっと前からいたんだと思っていたけど、アオの方が先にいたみたいだ。
「でも案の定、彼にも重いって言われて愛想尽かされちゃった。別れたくなくて彼と話したけれど、そこであたしの好きが人を苦しめてるってはっきり突きつけられたわ」
「……」
今日二度目だった。アオに対する僕の愚行を思い出してしまうのは。
「振られて独りになって、でもあたしが関わると人を苦しめちゃうから関係を築けなくて。それでどう生きていいかわからなくなって。……それであたしは自殺した」
「……っ」
僕とアオと同じだったんだ。彼女の言う生きる理由を見失った喪失感、それは僕もつい最近まで持っていたもので、痛く理解できた。
「それでこっちの世界に呼ばれて、ミズちゃんやソラくんと関わるようになったわ。最初は何とか気持ちを抑えていたのだけど、二人があたしの話を聞いてくれてね、受け止めてくれるって言ってくれたのよ。それで、今も二人の優しさに甘えているわ」
何だか二人らしいなと思った。ただ、林原さんの対応は割とドライで、それは良いのだろうか。
「それで、話を戻すのだけど。気が変わったのは、あんたを好きになることがあんたの無茶を止められると思ったからなのよ」
「……好きになることがですか?」
「ええ。あんたはミズちゃんがいながら自分の命なんてどうでもいいって感じだった。だったら、さらに悲しむ人が増えたら躊躇すると思ってね」
桃奈さんは自身の瞳を指で示した。まだ少し涙によって目元が腫れていて。彼女が悲しむ姿が容易に想像できてしまった。
「あたしは今まで自分のために人を好きになっていた。でも、今度はあんたのために好きになろうって決めたわ! 長くなっちゃったけどそれを伝えに来たの」
拒否権はないといった感じだ。話し終えると、彼女は一度伸びをしてベッドからぴょんと立ち上がった。
「ということだから、これからよろしく」
「わ、わかりましたけど……場合によって無茶は、すると思います……」
「なら、絶対できないくらい好きを伝えるから覚悟してね、ユーぽん!」
「ユーぽん!?」
最後に聞き捨てならない呼び名が耳に入ってきて、思わず聞き返した。
「可愛いでしょ? ユーぽんも可愛いの好きだし、ぴったりよ」
「いやいやいや! 他の二人とも毛色が違いますし、他にないんですか?」
何だかバカップルのあだ名みたいで恥ずかしいし、何か響きがクーポンみたいだし。まぁ可愛いは可愛いけど、僕には合わない。
「これしかないわ。異論は認めないから」
「ええ……」
「そうそう、あたしのことはモモ先輩って呼んで欲しいわ。あたしの方が先に来てるわけだしね」
僕の意見が通らず、彼女の意見ばかり押しつけられるのは、若干不満だったが言い合いをする気は起きないので、口に溜まっていた反論を消化した。それに、ユーぽんみたいな変なあだ名じゃないし。
「わかりました……モモ先輩」
「うぇへへ、先輩……先輩」
心の中でため息をついて彼女をそう呼ぶと、ずっとそう呼んで欲しかったのか凄く幸せそうで、その顔を見ると毒気が抜かれてしまった。
「おーい二人共〜そろそろ出るよ〜」
ドアの向こうからアオの呼びかける声がした。
「はーい! さぁマリアに帰るわよユーぽん」
「は、はい」
色々と思う事はあるけれど、モモ先輩との距離が縮まった気がして嬉しかった。もうあの敵意を向けられなくなると思うと、心が楽になる。
僕はリュックを背負い木刀を手に持って、モモ先輩と一緒に部屋を出た。そして、皆準備を終えるとクママさんの家を後に。
「皆さんありがとうございました。この恩は一生忘れません。また遊びに来てくださいね」
クママさんと別れの挨拶をしてから、僕達は村から出て森の中へ。
「ユーぽん、今回は大活躍だったわね」
モモ先輩は僕とアオの間にいて、身体が触れ合う距離を保って歩いていた。
「ユーぽんって、二人すっごく仲良くなったんだね〜」
「そうなのよ! ねぇ、あたしの事呼んでみて」
「……モモ先輩」
「うぇへへ。後輩ができちゃったわ」
何だろうめちゃくちゃむず痒い。今すぐ駆け出して風を浴びたくなる。冷ややかな感じが欲しくて、後ろを歩く林原さんに助けを求めて振り返った。
「……くっ」
「林原さん?」
彼は心臓部分を痛そうに手で抑えていて、顔を真っ青にして立ち止まっていた。
「どうしたんですか?」
「悪い、先に行ってくれ!」
「林原さん!?」
突然走り出して、帰り道とは関係のない方向に行ってしまって。反射的に僕は追いかけた。
「ま、待ってください」
「ユウ、行っちゃ駄目!」
「ユーぽん、戻ってきて!」
彼女達から少し離れた所でそう呼び止められて。その緊迫感に思わず足を止めると、上空から羽ばたくような音が聞えた。
「へ?」
「ピャーッ!」
「うわっ!」
上を見るとそこにはグリフォドールがいて。そいつはものすごい速度で迫ってきて、その瞬間僕の身体はそいつの後ろ足に掴まれた。その圧迫と衝撃で木刀を落としてしまう。
「飛んで……」
そして、そのまま空に連れ去られて、いつの間にか上にあったはずの木々が下にあった。
「ユウ!」
下にいるアオがオレンジの斬撃を飛ばしてくる。グリフォドールは避けるもその反動でグワングワン身体が揺さぶられた。
「ちょ、当たるって!」
「あっごめん!」
「でも、何もしないとユーぽんが」
下にいる二人はもどかしそうに僕を見上げる。
攻撃が止まるとグリフォドールは悠々と大きく羽を動かして前進。二人が遠くなって、どんどん島の外へと行ってしまう。
「嘘でしょ……」
「ピャーッ」
そうして少しの間も置かずに、僕の眼科には青空と雲だけが広がっていて。
「嘘でしょぉぉぉぉぉ!」
僕の叫びは誰にも届かない場所に吸い込まれた。