ふすまがトントン、とノックされて、澪が入ってくる。


もちろん、彩葉は今日のために買い与えられた服を着て、化粧をふんだんに施している状態だ。



「彩葉さま。馬車の用意ができました、こちらへ」



彩葉がこくりと頷けば澪は馬車へと歩き出す。


ついていきながら後ろを振り返る。


(___行ってきます)


彩葉は自分の弱みを見せられる唯一の場所であった自室に別れを告げ、また、前を向いた。





外に出ると、秋穂と春華、そして冬司がいた。


(見送りはしてくれるのですね......もうそんな愛情は残ってないと思っていました。思い違いだったのでしょうか)


少しでも愛情が残っていたのだと嬉しくなったその時だった。



「おねえさまぁ!粗相をして、主上に処刑されないようにね!」



春華の甲高い声が耳を貫く。彩葉はぐっと唇を噛み締めた。


(でも、母上と父上は......っ)


顔を上げると、おだやかな顔をしている、両親がいた。