来た、と彩葉は身構える。
いつになく、優しげな冬司の表情に背筋が凍りそうになりながら、ゆっくりと、彩葉は顔を上げた。
「___彩葉。後宮に行ってほしい」
言われたことがすぐにはわからなかった。
何度も何度も反芻してやっと理解したときには、指先の感覚がなかった。彩葉は頭から足の先まで震えて、今にも倒れそうだった。
「なんで......」
「本当は、春華が呼ばれたのだが、春華には婚約者がいるだろう?せっかく結婚まで話が進んでいるのに引き離すのはかわいそうだと思ってな」
「......婚、約者?春華が呼ばれていた.....?」
春華に婚約者がいたというのは初耳だった。
そして、そもそも春華が呼ばれていたという衝撃の事実に彩葉は固まった。
つまり___身代わりということではないか。
「ああ。だから、お前が後宮に行きなさい」
「えっ、でも」