「部屋に行く前に、お召し物をおかえになるようにと旦那さまから」
(____どういうこと?)
そう思った彩葉の心を見抜いたように澪は言った。
「旦那さまは大事なお話があるそうで」
そして、十分後には彩葉は豪華な服を着せられ、ふんだんに化粧をほどこされていた。
(死に装束としか思えません)
大体こういうときの冬司の話は処罰に違いない。しかも、すごく重い処罰が。
部屋に呼ばれ、着替えろと言われ、大事な話があると言われ。なにか、悪いことが起こる予兆としか思えないのは彩葉だけだろうか。
澪に連れられ、冬司の部屋を訪れる。ゆっくりと、ふすまに手をかけて開けると、冬司はすでに上座に座っていた。
「___ち、父上、お呼びでしょうか」
「よく来たな、彩葉」
名前を呼ばれ、思わず彩葉は顔を上げてしまった。
冬司に名前を呼ばれたときなど小さい頃しか記憶にないからだ。さらに、悪いことが起きるかもしれないという予感が増す。
「せっかく来たのだし、世間話でもしたいのだが......今回は少し重要な話があってな。すぐに本題に入ろうと思う」