園遊会毒事件から少したったある日。


「失礼いたします」

その声とともに入ってきたのは宦官の理央だった。

「理央さん?今日はなにしに___っ」

茉央が言いかけると、後ろから、誰かが姿を表した。

「陛下とは気づかず……ご無礼をお許しください」

茉央が一瞬で頭を下げたので、彩葉もそれにならう。


(この方が……陛下?)


「彩葉、といったかな」

急な質問におののきつつ、彩葉は顔を上げずに答える。

「私が彩葉にございます」

「ほう。実に面白い娘だ、毒を解決してしまったものとは到底思えない」

彩葉は背筋も凍る思いだった。

勝手に毒などと騒ぎ出したのがいけなかったのだ。

「……っ処分はいかほどに?」

「処分?そなたは何の話をしているのだ?」

「で、ですから、毒の事件で、私に処分を……」

(陛下、とぼけていらっしゃるのかしら)

なんで、とぼける必要があるのか知らないが、もしかしたら、彩葉をからかって楽しんでいるのではないか。

そう疑っていると、陛下は頭を下げた。

「陛下っ!そのようなことをされる身分ではございません」

「いや。あの毒を解決してくれたこと、本当に感謝している」

「ですが、あれは……」

たまたまなのに。

「なにか望む褒美はあるか?」

「いえ……こうして、陛下が私のところにいらっしゃっただけで、ありがたき幸せにございます」

「そうか?では、そこのものは?」

陛下は茉央に目を向ける。

「私は___彩葉さまを幸せにしてほしいです」