「お食事をふるまわせていただきます」


他の妃と挨拶をしているうちに時間は過ぎ......

もう、食事の時間になっていた。

どうやら、食事の時間はみな、緊張した雰囲気となる、と茉央が言っていた。

理由は前、帝や妃嬪の食事に毒がもられていたそうだ。

(それは、皆さん緊張しますよね)

そう思いつつ、彩葉も緊張する。


毒見役がおののきながら食事に手をつけようとしたその時、彩葉は走り出していた。



(この匂い.......間違いありません!)



「彩葉さま!?」

茉央が驚きながらもついてくる。

「だめですっ!その食事は食べてはいけません!」

「えっ!」

タイミングが一歩遅れてしまい、ちょうど毒見役が口に入れたときだった。


「すぐに吐き出してください!」


みな、あっけにとられて誰も動かなかったが、次の瞬間、場は大混乱に陥っていた。

「なに!?なにがあるの!」

「どういうことですの!?毒?」

「きゃぁ!怖いですわ!」

彩葉は茉央といっしょに侍女が口に含んだものを吐き出させる。

(舌に毒が残っている可能性もありますね......私がもっと早く気付けば)

「念のため、医務室に行ったほうがいいかと思われます」

「は、はい.......」

毒見役の侍女でさえ、まだ、状況を理解できていなそうだから、きっと他の人はもっと意味がわからないだろう。

急に最近入内した妃が園遊会で毒がなんだと言い出したのだから。

きっと、嘘ではないかと疑う人もいよう。

「すごいです!彩葉さま!どうしてわかったのですか?」

そう、茉央に聞かれ、彩葉はぐっと答えにつまってしまった。


なぜ、この毒がわかったかというと、昔、春華が面白半分で入れたからだ。

不思議な匂いのするご飯だと思ったが、なにも考えずに食べたら急に体が動かなくなって、嘔吐した。

そのときは、かなりの重症だったため、気づけてよかったのだが......

「前、少し聞いたことがあったからです」

「すごいですね!彩葉さまは聞いただけでわかるんですね!」


(私はそんな大層な人間じゃないのに......なんだか、だましている気分です)


彩葉は痛む心を無視して、自分の宮へと戻ることにした。