自分が声を荒げたことに気づいたのだろうか。



「そ、そういうわけではなく.......もっと、豪華な衣をもってこいと怒られるかと思って、つい......」



「え?」



どうして、彩葉が怒る立場になっているのだろうか。早く衣を決められなかった彩葉が怒られるべきであるというのに。


むしろ、茉央の言葉が正しいと思っていたのだが。


彼女は悲しそうな顔をして、彩葉からそっと、視線を外す。どこか、窓から遠くをみて、ゆっくり、話し始めた。



「わたしの二人前のご主人さまはとても器量がよくて、私のような下の者にもとても優しい方でした」



「......?はい」



急に話し始めた茉央に疑問を覚えつつも、彩葉は耳をかたむける。



「ですが、後宮は女の園と呼ばれている場所だということはご存知でしょう。前に話した通り、気位が高い方など、たくさんいらっしゃいます。そのため、いじめや嫌がらせなど日常茶飯事です。そのために......そのご主人さまは」



ぐすっと鼻をすする音が聞こえる。よく見ると、茉央が泣いていた。


彩葉は駆け寄って、背中をさする。



「......そのご主人さまはいじめや嫌がらせにあって......自殺、してしまったのです」