(寵妃になるって言っても……何をすればいいんでしょう?)


前の出来事を経て、彩葉は"偽りの寵妃"になったのだが。

「彩葉さま〜っ!今日は主上がいらっしゃる日ですね」

一人、自室で考えていると、茉央の元気な声が聞こえてくる。

「今日でしたっけ……?」

「もう、忘れるなんて……大切な日じゃないですか!」


「た、大切な日……?」

「だって国の一番えらい人が来る日ですよ?」

それがどうしたの、とでも言いたげな彩葉にしびれを切らしたのか、茉央が直球で伝えてくる。



「夜伽の可能性を考えてくださいっ!」



ぶわっ。


一瞬で彩葉の顔が真っ赤になる。

「な、ななな何をっ!?」

「彩葉さま、初心すぎますって……」

今度は茉央に呆れた視線を送られるが、聞いたのは茉央である。

「だ、だって!よ、夜伽なんて、したことないてす……」

「余計よかったじゃないですか?一度夜伽したことあるなんて、言えませんよ?」

「まぁ、そうですけど……」

そういう問題じゃないのだ。

作法やら、なんやらがある。

彩葉は急いで準備しなくちゃ、と焦っている茉央を横目に見ながら、迫りくる夜にためいきを吐いた。


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