彩葉はふと、気づいたことがあって足をとめる。
「茉央さん、えっと、ここ......その、なんていうんでしょう」
「はい、彩葉さまの言いたいことはわかります」
彩葉が気になったのはとある後宮内の場所だった。
なぜか、ここだけ荒れているような気がするのだ。
草は踏み潰され、花には元気がなく、しおれている。いわば、殺風景な状態だ。
「あまり、大きな声では言えないのですが.......後宮の東のほうは少々、気位の高い方が多く......耐えられなくなった庭師が、たくさんやめていってしまったのです」
「なるほど.......そうなんですね」
やめたくなるほど、気位が高いとは相当だ。
そんなに精神的なダメージがある出来事など、彩葉には想像がつかないが。
「あまり、東にいかないほうがよいかと思われます、彩葉妃。身の安全を守るためにも、お願いします」
「わ、わかりました」
茉央がそっと、忠告してくる。この様子だと、本当に東は危ないようだ。
(こんなに言うなら、いかないほうがよろしいですよね)