「後宮案内人兼彩葉妃の侍女となります、茉央(まお)と申します。これから、よろしくお願いします」



「......ま、茉央さん。よろしくお願いします」




”彩葉妃”。その言葉に自然とここが後宮だということを思い知らされて、心が引き締まる。


茉央が背筋をピンとのばして、こちらをまっすぐ見つめてくる様子を見るに、真面目な侍女だな、と思う。


もう、あの家とは無縁で、関わることはない。そう、教えてくれるようだった。



「ここが貴妃の宮で___、ここは食堂で____」



彼女の話を聞いているだけで精一杯なのに場所なんて覚えられるわけがない。


後宮は彩葉が思っていたよりも広く、大規模だった。


そして、最低限の知識を教えてもらった。


位が高い四妃は宮が与えられ、中級妃は棟を、下級妃は部屋を与えられる。彩葉は中級妃だから、棟が与えられるそうだ。


ちなみに、女官や官女などの位を持っていない者たちは、大きい部屋で布団を並べて寝るらしい。


教えてもらったとはいえ、まだまだ最低限で、後宮で生きていくには足りない情報のため、これから学ぼうと彩葉は決意した。


そして、いろいろなところを周っていたときだった。