20点には先に乗せた、ここで追い付かれるわけにはいかない。

 女体のサーブが打ち込まれる。八千が素早くボールの正面に入る、私は定位置よりライト側で構える。唯一パイセンが助走に入る。

 私はゴクリ、と生唾を呑み込もうとしたが、喉が渇いて緊張感だけが増した。

 私たちの速い動き出しに、女体側に動揺が見られる。次の瞬間、八千がボールを弾いた!

 レシーブミス? とも思われる低く速い弾道、それを今度は私がパンチング(・・・・・)で跳ね返す! そこへ飛び込んだのはミドルブロッカー唯一パイセン! 
 唯一が弾丸のようなトスをはたき落す!!



 稲妻のようだった……。



 体育館中が静まり返る、何が起きたのか分からない返球……サーブから女体コートにボールが叩き込まれるまで僅3秒を切ったであろう一撃。


 ボールインの審判の笛と共に大歓声が沸き上がる。

「やったー」「ナイスキ―」「決まったー」

 八千、パイセン、私は狂気のハイタッチ!

 これぞサッカーのキーパーから学んだパンチングパス。そしてワンフレームバレーを組み合わせたハイスピードクイック。

「その名も~『PTA』攻撃ぃ~」

 自分も加わりたかった睦美が突然の命名。

「PTA?」
「Parent‐Teacher Association?」
「なんつった?!」

「学校のPTA、『父母と先生の会』のことを言ったのよ」
「違う~P・パンチング、T・トス、A・アタックの略ぅ~」

「そんなダサいネーミングすんなっ!」



 これを機に女体に迷いが生まれる。特に11番一十美のブロックが惑う、『あのトスを自分が打ちきれるか……』それである。ライバル視した川瀬唯一に、圧倒的な差を見せられた気分のはずだ。

 そしてここぞというタイミングで打つのは、二胡の大砲のようなスパイク! 11番のブロックは追い付かない。ダメ押しにはモッテコイの破壊力。これでブレイク! 22‐19、後3点……。