第一セット、柏手高19‐23女体付属。崖っぷち。

 チームのピンチもあるけれど、プラスして零華先輩のことで私の心はザワついている。零華先輩とこんなに話したことは初めてだ……ううん、あんなに饒舌な零華先輩を見たことがない。

「菜々、多分零華の本気はこれから、よ!」

 パイセンにお尻を叩かれる。しかし叩かれた以上に唯一パイセンの言葉が尻に突き刺さる……いいえ、胸に突き刺さった。

 柏手高も四葉は後衛に下がったが、唯一が前衛のローテだ。

「四葉も菜々みたく、五和のようなグイグイ来るようなのが良いんだ。菜々も五和と四葉の間を割って入るような性格じゃないもんね」

 ここでわざと一旦セリフを切ったパイセンは、零華に向けて優しい笑顔を向けたように見えた。思えば零華先輩の進学を応援したのは唯一パイセンだけだったと思う。
『高校でもこのメンバーなら全国に通用する』、中学全国大会へと出場した私たち東洋アローズメンバーは、勝手に同じ高校に進学する気になっていた。


***


 お姉ちゃんと十色先輩は『平安学園』を選んだ。次の代の零華先輩がまず、東京の高校へと進学を言い出し、お姉ちゃんの代と零華先輩の代は揉めた。

「平安学園には私にトスを上げるにふさわしいセッターはいない。私の目標は全国3連覇。見合うセッターが来るのも育つのも待ってはいられない、それに……」

 零華はそう言った。

「それに? それに何だ?!」

 零華の台詞の最後は三咲にぶつけるように向けられて、三咲もついついケンカ腰になる。


***


「菜々が平安学園に行くとは私たち2人とも、そうは思ってなかったのよね……」

 唯一パイセンの呟きの意味が、私にはまったく分からなくて首を傾げた。



 柏手高校はそのまま第一セットを女体付属に取られた。