目標がある。大きな目標、それを達っするために分解していく。そしてそのやるべきことの意味を理解している。
 そのことはすごく大事だ。

 高校生の私が何故勉強するか、大学に行くためである。その先はまだ考え中。バレーのこともあるし……。中間テスト、期末テスト何て話じゃない。
 でも『分解』したときに学校のテストは大学入学に大きく関わる。だから期末テストもしっかりやる。

 テストの日程は分かっている。逆算して月次のやる事、それを可能にするための週次に落とす。それを日時に、それを24時間という誰もに平等に分け与えられた時間割に埋め込む。
 大学受験まで『頑張り続けろ』と言われれば息切れしてしまう。しかし分解して『千里の道を』『一歩ずつ』進める。

 そしてそのやるべきことの意味が自分自身に落とし込めているか、が肝となる。『なぜ』それが必要なのか……。



「サーブ来るよ!」
「こっち、任せといて!」
「際どいの見送らないよ!」

 最初の7秒間……3セットで終了する場合の試合時間は、約1時間~1時間半と言われる中での、最初のたった7秒間……ここに『勝利の鍵が隠されている』となれば集中できる!

『分解』と『理由』が明確に示されているのなら、迷いなど一つもない!



 笛の音がなり、女体24番・閏月二十四のサーブが柏手コート床を目指して突き刺してくる。四葉を狙ってきた!

 四葉先輩! 

 エースは相手からサーブで狙われやすい。エースを標的にしてサーブを打ち続ければそのうちレシーブが乱れ、攻撃が単調になってしまうからだ。

 四葉のサーブカットは乱される。

 この7秒に懸けた柏手高校の攻撃の出鼻を挫く最高のサービスを打ち込んできた女体付属。
 四葉はエースでなきゃいけない選手だし、チームは四葉をエースとして支えていかなければならない。
 動き出す攻撃陣。レシーブからの切り返しを強化し、センター陣の存在感を生かしたコンビバレーに磨きをかけてきた。


 乱されたレセプションに対し、お手本通りのトスを上げて、正攻法の攻撃をしたのでは芸がない。ここは全国大会だ。
 零華先輩に挨拶を兼ねて、『他の2人は知らないけど?!』と言わしめた『バカなセッター』と『零華先輩に匹敵するスパイカー』のことを思い出させてあげるわ!

 真ん中よりやや右側に返すAパス。乱されたサーブレシーブは左側に返っていく。私は敢えてライトに正対して、逆セットをわざと見せつける。
 左の睦美の速い平行や中に切り込んでの攻撃は、昔ミドルブロッカーをやっていた睦美のことを知る零華先輩に思い出させるに絶好の攻撃。逆セッターならではのオポジットの存在感を意識させた奇襲である。

 あら? 思ったより動揺してないわね? 

 女体側は体の動きがいつもと逆になるわけだから、ブロックマークとかレシーブ隊形にもっと戸惑うと思ったのだけれど。