「福岡の……祐修高……」
「あ~身長173センチ~、322最高到達だ~」
「2年生の春高リベロ賞……です……」

 彼こそは昨日のあのイケメン……これは運命ですか!? これは転校生と街角でぶつかって隣の席で教科書を見せるあの黄金パターンと同じレベルのベタ展開?!

『はじめまして、こんにちは。……村沢九十九って言います……』『はじめまして……村沢九十九……』『……村沢九十九……よろしゅう……』『村沢九十九……村沢九十九……村沢九十九……』

 あぁ……村沢九十九さん……彼が振り返るその仕草は勿論スローモーション。そして私の脳内で何度も繰り返し再生される。


「あれ? すごかね……ひょっとして『月バレ』読んでくれたと?!」
「あなたたちもこの宿舎?」

 九十九さんの問いかけに、首がもげる程のヘッドバンキングで頷くも、零華先輩の見えない圧で我に返る。

「あ、い、いえ、私たちは……その……」
「あたしたちは向かいの『とっとーと?』ッス。偶々女体見つけたんで、零華先輩に挨拶をと思ってきてみたら……イケメンに出会いました」

 八千が発情してる?! 目がキラキラしてます、こんな八千、初めて見ました。ちゃんと女の顔を持ってるんですね!

「九十九くん……この子は私が少しだけ気になるリベロよ……無名だけど」
「へぇ、零華さんが気にばするリベロなんてめちゃくちゃすごかリベロってことやなぁ? ってことは他の2人も?!」

「どうかしら? 他の2人は知らないけど?!」
「ゔ~零華先輩~酷い~」
「柏大手高校、2年、開菜々巳です」

 九十九の表情が微かに揺れたように見てとれた。何? よだれの跡でもついてるかしら? そう言えば鏡も見ずに外出ちゃった……。

 酷いわ、零華先輩……。悔しくって、つい自己紹介の声が荒くなっちゃったじゃないですか。九十九さんの表情を窺って、あぁ恥ずかしい。


「開……菜々巳さん?! よろしく。――でこちらは? 零華さんが知らん振りできん程美人やけど?」

「ゔ~皆藤睦美~」
「睦美さん、よろしく」
「容姿もバレーも私には及ばないことを教えてあげるわ」

 ひょっとして私が一番雑魚扱い? 九十九さん、九十九さんもルッキズムですの? 睦美はあの感じだから見逃しがちだけれども、睦美も黙ってキツメのメイクでもすれば零華先輩に似てるのかも??
 隣で八千が短く息を切ってハッハッと尻尾を振って『次』の順番を待っている。その出鼻を睦美が挫いた。

「彼女は~ハチ~」
「コラッ! 睦美! ハチじゃない、八千です! 高坂八千! リベロやってます!」

「よろしく、八千さん。うちん女子も出場しとーけん、要注意リベロだって伝えとくばい」

 インターハイ出場校は男子49校、女子52校。東京都のみ男女各2校、女子のみ北海道、大阪府、神奈川県が各2校、そこに開催地都道府県がもう1校増加される。
 因みに男子と女子はスケジュールが分かれていて、女子の全試合が終わった後、男子の大会が始まるのが通例だ。