どういう意味? 監督の真意が読めない。監督はこのセットを落とすことも想定している?
「どうした? 返事は?」
「は、はい!」
「はっきり言って、セッターの資質としては開、お前の方が上だ。木村にはセッターとして致命的な『癖』がある」
「え?」
「練習終わりの2対2ではっきりと分かった」
「……」
私にはまだ何のことだか分からないでいた。あの2対2は監督のドS嗜好ではなかった?
監督は私とは顔を向き合わせず、コートから視線を切らすことはない。コートでは五和先輩からのライトオープントスが上げられている。五和先輩の安定した回転のない高いトス……。
「木村のトスワークを見て学べ。うちには『打ち切れる選手がいる』だからこそ『打たせる』ことを意識し過ぎて、のびのびできていないのが今のお前だ。もっと駆け引きを楽しめ、忘れるな」
「!!」
監督の言葉よりも睦美のスパイクの方に意識が向いているのが自分でも分かっている。ライトオープンの高いトスを睦美がジャストミートした。
それを見事にドシャットしたのは勿論、姉・三咲。味方ベンチから悲嘆と声援が飛ぶ。
「スパイカーの決定率はスパイカーのモノだ」
これで逆転……試合から目を逸らさない監督は少しも動じず話を続ける。
「皆藤だって、当の昔に木村のオープントスを打てている」
「え?!」
「皆藤が回転のあるオープンしか打てないスパイカーなら、レギュラーなわけないだろ……」
「…………」
「木村は自分の上げたいとトスを上げている。しかしセットアップはお前の方が上だ。お前の姉のような、優秀な『ゲスブロッカー』ならそろそろ気付いているはずだ」
なにを? 分かりません……。監督は何が言いたいの? お姉ちゃんは何に気付いたの?
唯一パイセンのAクイック。これは三咲もブロックしきれず、邪魔をした形でレシーバーに当たってコート外へと落ちる。再び同点に追いついた。
「『こういう攻撃をしたい』という気持ちをもってトスを上げろ。スパイカーにその意思を示せ。その中でアタッカーとの意思疎通を計れてこそエースセッターだ。忘れるな」
「エースセッター……」
エースセッター……その言葉の響きだけが心の中で反響して木霊となっていた。環希先輩のセットアップフォームが鮮烈に映し出される。
「バックトスはトスの中でも安定すると言われているが、アタッカーを目視できないためトスを上げる距離感が必須となる。しかし木村はボール下への入りがお前より一歩遅い上に、『バックトスのときだけ先に周囲を見てからボール下へ入る』という癖がある」
「何でそれが2対2で分かったんですか?」
「2対2はレシーブした方が必ずアタッカーとなる。だからレシーブした人間の態勢によって、どのトスなら打てるか決まってくる。レシーバーを目視しているからこその2対2での圧倒的なトス回し、普段からレフトの喜多田(四葉)と相性良いのも合点がいく」
「特定の人=トスを上げる人が決まっているならではのトス……?!」
第2セットは三咲のブロックが冴えに冴え落としてしまう。
「インタビュー、楽しみになってきたな」
「まだセットカウント1-1です」
「どうした? 返事は?」
「は、はい!」
「はっきり言って、セッターの資質としては開、お前の方が上だ。木村にはセッターとして致命的な『癖』がある」
「え?」
「練習終わりの2対2ではっきりと分かった」
「……」
私にはまだ何のことだか分からないでいた。あの2対2は監督のドS嗜好ではなかった?
監督は私とは顔を向き合わせず、コートから視線を切らすことはない。コートでは五和先輩からのライトオープントスが上げられている。五和先輩の安定した回転のない高いトス……。
「木村のトスワークを見て学べ。うちには『打ち切れる選手がいる』だからこそ『打たせる』ことを意識し過ぎて、のびのびできていないのが今のお前だ。もっと駆け引きを楽しめ、忘れるな」
「!!」
監督の言葉よりも睦美のスパイクの方に意識が向いているのが自分でも分かっている。ライトオープンの高いトスを睦美がジャストミートした。
それを見事にドシャットしたのは勿論、姉・三咲。味方ベンチから悲嘆と声援が飛ぶ。
「スパイカーの決定率はスパイカーのモノだ」
これで逆転……試合から目を逸らさない監督は少しも動じず話を続ける。
「皆藤だって、当の昔に木村のオープントスを打てている」
「え?!」
「皆藤が回転のあるオープンしか打てないスパイカーなら、レギュラーなわけないだろ……」
「…………」
「木村は自分の上げたいとトスを上げている。しかしセットアップはお前の方が上だ。お前の姉のような、優秀な『ゲスブロッカー』ならそろそろ気付いているはずだ」
なにを? 分かりません……。監督は何が言いたいの? お姉ちゃんは何に気付いたの?
唯一パイセンのAクイック。これは三咲もブロックしきれず、邪魔をした形でレシーバーに当たってコート外へと落ちる。再び同点に追いついた。
「『こういう攻撃をしたい』という気持ちをもってトスを上げろ。スパイカーにその意思を示せ。その中でアタッカーとの意思疎通を計れてこそエースセッターだ。忘れるな」
「エースセッター……」
エースセッター……その言葉の響きだけが心の中で反響して木霊となっていた。環希先輩のセットアップフォームが鮮烈に映し出される。
「バックトスはトスの中でも安定すると言われているが、アタッカーを目視できないためトスを上げる距離感が必須となる。しかし木村はボール下への入りがお前より一歩遅い上に、『バックトスのときだけ先に周囲を見てからボール下へ入る』という癖がある」
「何でそれが2対2で分かったんですか?」
「2対2はレシーブした方が必ずアタッカーとなる。だからレシーブした人間の態勢によって、どのトスなら打てるか決まってくる。レシーバーを目視しているからこその2対2での圧倒的なトス回し、普段からレフトの喜多田(四葉)と相性良いのも合点がいく」
「特定の人=トスを上げる人が決まっているならではのトス……?!」
第2セットは三咲のブロックが冴えに冴え落としてしまう。
「インタビュー、楽しみになってきたな」
「まだセットカウント1-1です」