OH:二胡184cm MB:唯一178cm OP:睦美180cm 

 S:菜々巳171cm L:風和莉(ふわり)166cm OH:四葉 181cm
       (MB:風香184cm)

 のS5ローテ、ブロックが強いローテでスタートする。


「唯、あんたは平安に来るべきだった。残念だよ」
「三咲先輩、インターハイの雪辱、そして環希先輩の想い……今日こそは……」
「『今日こそ』なんて言ってる時点で負け組なんだよ。唯、そんな奴が環希を騙るな……」

「負けませんよ」
「唯、良いのか? セッター、2年生の木村って奴じゃなくって、あの負け犬で?」
「菜々は先輩が言うほど弱くないですよ」
「フンッ」


***


 環希先輩の美しいフォームからのセットアップ。飛び散る汗と、窓から入る明るい日差しがキラキラと体育館中を輝かせている。そのキラキラの飾りを背景に高く完璧な放物線を描いて落ちていくボール……。そのボールだけが瞬間移動したかのように、音を置き去りにしてボールは床を弾んで転がる。そんなスパイクを叩いたのは零華先輩。



「真ん中ソッコー」

 お姉ちゃんの声と共にブロックが完成する。若干環希先輩が低いか? 打点の高いスパイクは、環希先輩のブロックの上を抜けて自陣へ向かって行く。
 そのコースが分かっていたかのように八千がスパイクを切る!

 再び環希先輩がトスを上げたのなら、十色先輩のバックアタックが漫画の効果戦のような流線を残して吹っ飛んでいく。



 みんな笑顔だ。唯一パイセンのAクイックが空気を巻き上げ、お姉ちゃんのブロックが地鳴りを起こす。

 私はその中には入れず、みんなのプレーを眺めている。



 交代で入った睦美のDクイック、移動攻撃(ブロード)がバレーボールの躍動感とスピード感で観てる側の私をコートへと引き込んでくる。
『一緒にやろうよ』って……。

 でも……私の入れるポジションなんてない……。


***


「集合っ!」

 唯一パイセンの号令で静かに目を開けた。監督の周りに集まる……あぁ……監督が何か言ってる……きっと試合の大事なこと言ってるんだろうな……何だか頭に入って来ないな……。



「はいっ!!!」

 突然フルボリュームとなった、みんなの合声が飛び込んできて、強制的に現実に足を着かされた。膝に力を入れる。さぁ、行こう!



 試合が始まる……。