隣のコートでは平安学園が試合を行っている。勝てば次の相手となる試合……。お姉ちゃんのいる学校、私たちが倒さなければならない相手、あの日倒すと誓った相手。
 勝ってインターハイ予選の雪辱を果たすべく、決戦の場に進むためには準々決勝(ここ)でつまずくわけにはいかない。


 この試合23点目、セット11点目となる四葉先輩のスパイクが相手コートに突き刺さった。
 得点23(アタック20、サーブ2、ブロック1)アタック決定率51%(39本中)サーブレシーブ返球率は62%、大活躍のエース。

 試合終了の笛と共に座り込んでしまう八千。サーブレシーブ返球率は76%とサーブが得意のチームから考えれば驚異の数字。

「八千、大丈夫? 立てる?」
「ちょっと気が抜けただけッス、大丈夫ッス」

 唯一パイセンの声掛けに応える八千。それを観察していた唯一パイセンの目が結論を導き出したようだ。

「八千、残念だけど、次の試合はベンチだ。私が監督に伝える」
「でも、次は……」
「守護神なんでしょ? ピンチになったら頼むよ。それまでに身体を休ませておいて」
「2試合目、頼みましたよ」
「任せとき!」


 八千は明るく応えていたが、平安戦スターティングメンバーでないことの悔しさが隠せていないことは明らかだ。もちろん唯一パイセンが、それに気付いていないことなんてないってことも。



 隣のコートも試合が終わった。それを見つめていた私とお姉ちゃんの目が空中でぶつかる。その距離が7:3ほどで押されている気がした。押し返そうと目力を強めた最中、それを往なすように目を逸らされる。
 代わりにお姉ちゃんが言葉を交わす相手は……平安学園OHエース、高遠十色(たかとおといろ)3年。東洋アローズ時代の零華先輩の対角(ライバル)……。私なんか眼中ないってですかっ!