次にボールが止まる時はどちらかのコートにボールが落ちた後、その全ての端緒となるサーブ。得点を動かしたのはレシーブが、トスが、スパイクが、ブロックが……全てが繋がっている。

「カバー、お願いッ!」

 いきなり取り乱したように二胡が叫ぶ。すぐさま八千がアンダーでレフトへとボールを上げる(2段トス)。見上げたボールを計って四葉が助走をつけ、体育館の照明を浴びるように高く飛ぶ。ブロックは3枚ついた、平均180センチ越えの壁、高い!

 四葉が視界・前のめりに迫る6本の鉄格子の隙間を探す。センター寄りに上がったボール、四葉はネットに平行気味に入ってきている。ブロックはクロス側を阻む。
 ライン際、ブロックとサイドラインの間が空いているも、巻き込むように打てばホールド(* ボールを持つ行為)を取られかねない。
 このままインナーに叩く? コート奥を狙ってブロックアウトを誘う? それとも躱す? 見守る私の中にもいくつかの選択肢が浮かぶ。

 四葉先輩の強気は逃げない。この“初めの一歩目”、“いの一番”でエースが真っ向勝負しないでどうするんです?!

「吹き飛ばせッ!」

 思わず私は声を張る。


 ダダンッッッ!!

 ボールが連打の響きと共に床を叩く、それは柏手(こっち)のコート。見事な『ドシャット』(* シャットアウトに接頭語の“度”で強調)。

 先制点と共に流れを渡してしまった形だ。



 ピッ!

 笛と共に再び1番の強烈なスパイクサーブが飛ぶ。今度は八千がサーブカット。八千にしては不本意なBパス(* セッターの定位置より少しだけ逸れたパス)だ。

「ごめん菜々巳、任せたッ」

 八千の言葉は聞こえているが聴いていない、思考が先行する。誰を使う? 素早く落下点に入ると味方の位置とブロッカーとリベロの場所、他敵陣形を素早く視認。唯一パイセンの動き出しが早い。ブロッカーがクイックを警戒しているのが分かる。

 四葉先輩のリベンジ要求がすごいです……。ついでに睦美のバックアタックのウズウズが駄々洩れしてますよ。相手ブロッカーたちが見事に自分の持ち場のスロット(* アタックの出処を分担している=ゾーンディフェンス)を警戒しているのが分かる。

 一発取り返したい場面。いつまでも自信満々そうな1番(あいつ)にサーブをさせるのは調子に乗させるだけだ。ここで切る!

 この場面で一番警戒されていないのは……。