「やっぱり行くのか?」

 紫苑が未練たっぷりに問いかけた。少年としては、危険な世界には行って欲しくないというのが正直な想いだった。

「うん。私が一緒に行かないと、ルカがあっちに戻れないからね。でも、必ず返ってくるよ」

 美兎は紫苑の手を握り、はっきりと答える。

「それに、怪我の治りも早いし筋力だって何倍にもなってるみたいだしね。チートよ、チート!」

 美兎は無理にでも明るく笑顔で振る舞った。そうでもしないと恐怖心に押し倒されてしまいそうだった。

「ミト、準備はいいか?」

 ルカの声に美兎は大きくうなずく。ルカの姿はまた子供のサイズに戻っていた。

「では、シオン。世話になったな。美兎は必ずこの世界に帰らせる」
「すぐに終わらせて帰ってくるよ!」

 二人の言葉にうなずく紫苑。

「じゃあ、出発!」

 美兎は黄金色に輝く翼を出すと、ルカを抱えて大空へと駆け上っていった。
 
 了