ルカと衝撃的な出会いをした翌日は日曜日。
美兎と紫苑はルカの希望で買い物も兼ねて、駅前のショッピングセンターや公園などを見て回る事になった。
ルカは紫苑の家に逢瀬川家の知り合いということにして、八神家に宿泊させてもらっていた。流石に美兎が一人でいる家に居候するのも問題だろうと三人で話し合った結果である。
元々海外からの来客も多い紫苑の家では、ルカのことをあっさりと受け入れてくれた。晩御飯はBBQをやるということで、美兎も呼ばれてご相伴にあずかり、すっかり打ち解けた三人は、翌日にルカの身の回り品を買いに行く約束をして就寝したのだった。
駅からの帰りのバスを、最寄りのバス停で降りた三人は、美兎の家に向かって歩いていた。
近所の小川の土手に出て、家路を急ぐ三人。
「ミト、シオン。今日はなかなかに珍しい体験ができて嬉しかったぞ」
ルカは満足そうな笑顔を浮かべて二人のことを見た。
そうだね。と美兎が答えようとしたとき、スマホの着信音が鳴った。
「茜からのメッセージだ。なんだろう?」
SNSで送られてきたメッセージには短い動画が添付されていた。
『御門公園で超でっかい鳥! 見たんだけど!!』
それは、ほんの10秒程度の短い動画だったが、明らかに大きすぎる鳥が飛び去るところが写っていた。
「えっ……? 何この鳥、鷹かなにか?」
美兎が見ているスマホを紫苑が覗き込む。
「茜って同じ陸上部だっけ。なに、鳥の動画? なんかデカくないか」
紫苑も不思議そうに首を傾げる。
「なんじゃ。何を見ているのだ。我にも見せてくれんか?」
「うん、いいよ」
美兎はルカの脇に並んで少し屈むと、動画を再生させた。
無言で動画を見つめるルカ。その間、動画は連続再生で繰り返し表示されている。
「これは、凶鳥ガルーダ……。キュアノスでも死を招くと、忌み嫌われる巨鳥だ」
「えっ、向こうの世界の鳥?」
「ガルーダは刑場の獄卒でもある。我が逃げ出した刑場にも獄卒としておった」
「えっ、それって?」
「うむ、我を追ってこの世界までやってきた可能性が高い……」
「じゃあ、隠れていないとマズイんじゃないか? 美兎、これどこで撮影された動画なんだ?」
「えっと、御門公園って書いてあったから、あの山の麓だね」
美兎は川向うに見える山を指差した。
ルカと紫苑が少女の指し示した山の方向を見ると、微かに揺れ動く黒い点が見えた。
「なんか見えないか?」
紫苑が目を細めて見やる。
「いかん。もう見つかってしまったようだ」
ルカの声色が低くなり、緊張しているのがわかる。
「えっ……?」
二人を抱きかかえて土手に転がるルカ。そのすぐ上を大きな影が通過していった。
「ここに隠れているのだ!」
美兎たちを草むらに倒したまま、土手を駆け上がると、ルカはすぐさま鉄甲を身にまとった。
大きな影は空中で身をひるがえすと、その場で翼を羽ばたかせ空中に停止した。
「くっ、でかいな」
紫苑が膝をついて起き上がると、その姿を目に捉えた。その手にはしっかりとスマホが握られていて、巨大な鳥をカメラに捉えていた。
まるでカラスのような真っ黒な体躯。その姿はインターネットで見た海外の大鷲のようだった。
ただ、違うのは大きな鉤爪が六本あることだった。
「六本脚……。明らかに地球の生物じゃないよね?」
美兎も体を起こすと怪鳥を見上げた。その嘴からは黒煙のようなものが吹き出している。
「まさか、火を吹いたりしないよね」
美兎がそう言ったか言わないかのタイミングで、怪鳥はルカめがけて急降下をしてきた。
大きな鉤爪でルカを狙うが、少年は手甲で辛うじて弾き返す。
ガルーダは急転回すると、今度は六本の鉤爪でルカを捕まえに来た。
ルカは必死に対抗するも、両腕を掴まれ空中に持ち上げられてしまう。
「あっダメ!」
美兎は思わず駆け出すと、空中へ舞い上がろうとするガルーダめがけてジャンプをした。
普通なら絶対に届かない高さだったはず。
美兎の虚しいジャンプで終わるはずだったが、皆の予想に反して美兎はルカの体に飛びつき掴んだ。
「ミト! 何をしておる、危ないぞ!」
「ルカのことを連れて行かせない!」
「馬鹿ことを! もう降りられぬぞ……」
地上がグングンと遠ざかっていくが見える。
美兎は血の気が引き、一瞬気を失いかけたが、ルカが少女を落とさぬよう力強く抱き寄せた。
「このままキュアノスまで行くつもりか?」
ルカがそう独り言ちると、ガルーダはそのまま雲の中へ突入していった。
美兎と紫苑はルカの希望で買い物も兼ねて、駅前のショッピングセンターや公園などを見て回る事になった。
ルカは紫苑の家に逢瀬川家の知り合いということにして、八神家に宿泊させてもらっていた。流石に美兎が一人でいる家に居候するのも問題だろうと三人で話し合った結果である。
元々海外からの来客も多い紫苑の家では、ルカのことをあっさりと受け入れてくれた。晩御飯はBBQをやるということで、美兎も呼ばれてご相伴にあずかり、すっかり打ち解けた三人は、翌日にルカの身の回り品を買いに行く約束をして就寝したのだった。
駅からの帰りのバスを、最寄りのバス停で降りた三人は、美兎の家に向かって歩いていた。
近所の小川の土手に出て、家路を急ぐ三人。
「ミト、シオン。今日はなかなかに珍しい体験ができて嬉しかったぞ」
ルカは満足そうな笑顔を浮かべて二人のことを見た。
そうだね。と美兎が答えようとしたとき、スマホの着信音が鳴った。
「茜からのメッセージだ。なんだろう?」
SNSで送られてきたメッセージには短い動画が添付されていた。
『御門公園で超でっかい鳥! 見たんだけど!!』
それは、ほんの10秒程度の短い動画だったが、明らかに大きすぎる鳥が飛び去るところが写っていた。
「えっ……? 何この鳥、鷹かなにか?」
美兎が見ているスマホを紫苑が覗き込む。
「茜って同じ陸上部だっけ。なに、鳥の動画? なんかデカくないか」
紫苑も不思議そうに首を傾げる。
「なんじゃ。何を見ているのだ。我にも見せてくれんか?」
「うん、いいよ」
美兎はルカの脇に並んで少し屈むと、動画を再生させた。
無言で動画を見つめるルカ。その間、動画は連続再生で繰り返し表示されている。
「これは、凶鳥ガルーダ……。キュアノスでも死を招くと、忌み嫌われる巨鳥だ」
「えっ、向こうの世界の鳥?」
「ガルーダは刑場の獄卒でもある。我が逃げ出した刑場にも獄卒としておった」
「えっ、それって?」
「うむ、我を追ってこの世界までやってきた可能性が高い……」
「じゃあ、隠れていないとマズイんじゃないか? 美兎、これどこで撮影された動画なんだ?」
「えっと、御門公園って書いてあったから、あの山の麓だね」
美兎は川向うに見える山を指差した。
ルカと紫苑が少女の指し示した山の方向を見ると、微かに揺れ動く黒い点が見えた。
「なんか見えないか?」
紫苑が目を細めて見やる。
「いかん。もう見つかってしまったようだ」
ルカの声色が低くなり、緊張しているのがわかる。
「えっ……?」
二人を抱きかかえて土手に転がるルカ。そのすぐ上を大きな影が通過していった。
「ここに隠れているのだ!」
美兎たちを草むらに倒したまま、土手を駆け上がると、ルカはすぐさま鉄甲を身にまとった。
大きな影は空中で身をひるがえすと、その場で翼を羽ばたかせ空中に停止した。
「くっ、でかいな」
紫苑が膝をついて起き上がると、その姿を目に捉えた。その手にはしっかりとスマホが握られていて、巨大な鳥をカメラに捉えていた。
まるでカラスのような真っ黒な体躯。その姿はインターネットで見た海外の大鷲のようだった。
ただ、違うのは大きな鉤爪が六本あることだった。
「六本脚……。明らかに地球の生物じゃないよね?」
美兎も体を起こすと怪鳥を見上げた。その嘴からは黒煙のようなものが吹き出している。
「まさか、火を吹いたりしないよね」
美兎がそう言ったか言わないかのタイミングで、怪鳥はルカめがけて急降下をしてきた。
大きな鉤爪でルカを狙うが、少年は手甲で辛うじて弾き返す。
ガルーダは急転回すると、今度は六本の鉤爪でルカを捕まえに来た。
ルカは必死に対抗するも、両腕を掴まれ空中に持ち上げられてしまう。
「あっダメ!」
美兎は思わず駆け出すと、空中へ舞い上がろうとするガルーダめがけてジャンプをした。
普通なら絶対に届かない高さだったはず。
美兎の虚しいジャンプで終わるはずだったが、皆の予想に反して美兎はルカの体に飛びつき掴んだ。
「ミト! 何をしておる、危ないぞ!」
「ルカのことを連れて行かせない!」
「馬鹿ことを! もう降りられぬぞ……」
地上がグングンと遠ざかっていくが見える。
美兎は血の気が引き、一瞬気を失いかけたが、ルカが少女を落とさぬよう力強く抱き寄せた。
「このままキュアノスまで行くつもりか?」
ルカがそう独り言ちると、ガルーダはそのまま雲の中へ突入していった。