ジェマンドが率いるバンドが
にわかに話題になっているようだ。

舞台俳優として集められていたメンバーが
今度は、バンドを組もうと言うことになり、
全部で5人が集まった。

それは、奇しくも
アシェルたちが受けたオーディションして
合格した者たちが集合していた。

ブレーメンのメンバーは全部で4人だったが、こちらのメンバーは5人で
1人分、人数が多かった。

ドラム、ギター、ベース、
キーボード、ボーカルの定番の形態に
なっていた。

 オーディションで合格したという誇りがあるのが、みんな鼻高々で、謙遜するものがいなかった。楽器演奏はというと、もともと、習い事をしていて何でもできるという者たちだったため、特に苦労する部分がなく、自然にまるまる1曲演奏することができた。


ボーカルには赤ずきんの狼役で
合格したロック、
キーボードには、赤ずきんに抜擢された
マージェ、
ベースギターには、うさぎとかめの
かめ役のタートル、
エレキギターには、うさぎとかめの
うさぎ役のレオンだった。

そして、ドラムには何故か、
ジェマンド本人が参加していた。

「この曲、
 本当に許可取ってきたんですか?」
 
 まともな考えを持つボーカルのロックは
 素朴な疑問をジェマンドに投げかける。

「いいじゃない?
 まだ無名だし。
 誰もわからないさ。
 俺たちが作った曲で売れれば
 問題ないさ。
 アカウントだって、
 こっちのものだから。」

 闇が深いジェマンドだということを
 気づいたロックは知らないふりをしようと
 生唾を飲み込んだ。
 きっと反抗したらと考えただけで
 恐怖だった。

 「いいじゃん、いいじゃん。
  訴えられてないし。
  バレてないさ。
  どーせ、個人的に作ったものだろう?
  こっちは大きな会社がついてるんだから
  どうとでもなるさ。」

 かめのタートルも乗っかった。
 ジェマンドはにかっと歯を見せて笑う。

 妖精のマージェとうさぎのレオンは、
 余計なことは言わないでおこうと
 ずっと黙っていた。

「そういや、社長。
 俺らのバンド名まだ、
 決めてないですね。
 動画配信では、ロックが歌っていて
 誰かは伏せてましたよね?」

「そうそう。
 そうなんだよ。
 どうする??
 まだ、決めてないから。」

「ふと考えてみたんですが、
 【ジョーカー】とかどうですか?」

レオンは、パッと閃いた。

「へぇ、かっこいいじゃん。
 他はない?」

「【デラックス】とかもいいかなとも
 思いましたが…。」

 タートルはボソッという。

「【ビクトリー】とかも良いかなとも。」

 マージェが小声で言う。


「どれもかっこいいけど、
 最初の【ジョーカー】が
 1番しっくり来るかな。
 よし、これでバンド名ってことに
 しよう。」

「はい!」

 みんな社長であるジェマンドに
 頭が上がらない。
 右と言われたら、右に。
 左と言われたら、左になる。

 オーディション合格者のロックメンバーは
【ジョーカー】になった。
 
 トランプで言うと1番強いカードとして
 使うことが多い。
 だが、ババ抜きは煙たがれれるカードだ。

 陰と陽の意味を合わせ持つ名前になった。

 明日は、ロックフェスが開催される。

 このフェスにはアシェルたちの
 ブレーメンも
 参加する予定だった。

 ここで直接対決することになるとは
 夢にも思わなかった。

 みな、どうなるかと始まる前から
 ドキドキしていた。

 フェス会場でどのメンバーが
 1番盛り上がるか一目瞭然だ。

 ライオンのボスも眠れないほどだった。

 フクロウが木の枝で休んでいた。

 月が煌々と輝いている。

 今夜は長い夜になりそうだ。