ルークは机の上で、悩みに悩んだ。
どうすればお客さんを呼び込めるか。

スキルを伸ばすべきか。

ボイストレーナーを超一流な人に高額で
頼んでみた。
アシェルはプレッシャーを感じたが、
声の出し方や音程の取り方を学ぶことが
できた。

ボーカルだけではなく、
ギター、ドラム、フルートの楽器演奏も
超一流のコーチにお願いしてみた。

確実にメンバーのスキルは強化されたが、
会場でやってみても、
どれもこれも当たらない。

歌も楽器も上手くなったはず。

何かが足りない。

ライブを終えて、事務所に戻ってくると、
アシェルとリアムが喧嘩を始めていた。

「アシェルがあの時、裏声なんて使うからじゃないのか!?」

「そっちこそ、
 キーボードを弾き間違ってる
 じゃないか。人のせいにするなよ。」

「まぁまぁまぁ。」

 ルークは間に入って止めようとしたが、
 体が小さくて、吹っ飛ばされた。

「ルークは黙ってろ。」

 壁に打ち付けられて、ハッとした。
 このメンバーに足りないもの。
 団結力。

 個人個人は光輝く良さを持っているが、
 まとまったときに力が足りない。

 ミスしたり、上手く行かなかったときに
 お互いにフォローできないし、
 良くしようと思ってない。

 それが原因じゃないかと気づいた。

 手のひらをポンと叩いた。

「みなさん!!」

 アシェルとリアムは
 取っ組み合いの喧嘩になっていた。
 そんな中、ルークは叫んだ。

「これから、着いて来てほしいところが
 あります。」

「は?」

「え、どこに行くんですか?」

 オリヴァが驚いて聞いた。
 クレアは興味なさそうに着いていく。

 アシェルとリアムは、
 幾分気持ちが落ち着いて、
 ルークの進む方へ着いていく。


***


 暑い砂浜にさざなみが繰り返す。

 ここは、だだっ広い海だった。

 ヤドカリが、水際ギリギリを歩いていた。

 ルークは砂浜にポールを刺した。

 一体何が始まるのか。

 4人はじーと黙って、見つめていた。

 ルークは持っていたボールに空気を
 入れた。

 足元では小さなカニが家族連れで
 歩いている。


「準備できました!!」

「へ?」

「ビーチボールしましょう。
 2対2で、勝負するんです。」

「なんで?」

 アシェルの額から汗がどんどん出てくる。

 クレアは黒い傘を広げ、日陰を作った。

 オリヴァは、甲羅の中に隠れていた。

 リアムは、耳をだらんと垂らして、
 汗がどんどん出ていた。

 炎天下の中で、ビーチボールを
 なぜしなくちゃいけないのか
 
 疑問でしかなかった。

 ルークはジーと睨んで動こうとしない。

 とりあえず、アシェルは、
 空気を入れたボールを拾いあげて、
 何となくグループ分けされて
 ネットの反対側にいる
 オリヴァとクレアに向かって
 サーブを打った。

 横でザザーーン波の音が響いていた。