「お出かけ!お出かけ!」

助手席でみなみが子供のようにはしゃいでいる。

「嬉しそうだな。お前」

「嬉しいよ。普通に嬉しい」

体調不良が続いた事もあり、みなみは、ほとんど外出しなくなっていた。
たとえ行けたとしても、近所のコンビニが精一杯。
それでも帰ってくると疲れて眠ってしまう。

「危ないから大人しくしててくれ」

「慧ってお父さんみたい。あっ!?もうパパなのかな?」

「だから、何度も言ってるだろ。まだ決まったわけじゃないから」

「でも99パーセント決まり!だよね」

「もしそうなら立ち会ってくれるよね」

「へその緒、慧に切ってもらいたいな」

「お前そんなこと考えてたの?」

そう言うと、みなみは少し眉を下げた。

「不安もあるでしょ。こちらも命かかってるんだから」

病院で、問診票を記入し、呼ばれるのを待つ。
緊張で固くなっている俺に対し、みなみは楽しそうだ。
待合室にいる赤ちゃんに手を振って怖がられたりしている。

晴れやかな彼女の顔を見ながら、俺は、今後増えるであろう家族との未来を想像してみたが、その時はなぜか、頭の中に霧がかかったようになり、結局何も見ることは出来なかった。